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『…大きい』








スウェットに腕を通してみたものの
手の先まですっぽりと隠れてしまった。


下はハーフ丈のズボンだったから、
こっちはまだ何とかいけそうだ








動くたびに服から漂う風磨の匂いを感じながら
お風呂場の脱衣所を出て2階の部屋に向かう。











「やっぱでかいな」








部屋に入ると部屋着に着替え終わった風磨がいて、
ベッドに座ってタオルで頭を拭きながらそう言った。





見られてるのが何だか気恥ずかしくて
黙ったまま袖をギュッと握っていると、

「こっち座れば?」と言われて
大人しく彼の隣に腰を下ろした。








『…ありがとう』





短く放った言葉が静かな部屋に響く


何に、と言われれば困るけれど
兎に角お礼を言いたかった。



風磨は「別に」とひと言いうと
持っていたタオルで再び荒っぽく頭を拭いて、
しばらく2人とも沈黙が続いた。









『…聞かないんだね』





足元を見つめたまま私が言うと、
タオルを動かしていた風磨の手が止まった。




路地裏で泣いていたときも、
そこから風磨の家に帰ってくるときも、
風磨は顕嵐のことを一度も聞いてはこなかった。





「聞いて欲しいの?」

『…え?』

「一緒にいたのは誰で、お前は何で泣いてたのか。」

『……』





視線を向けると目が合って、
私はすぐに返事をする事が出来なかった。





思わず近くの棚に視線を移すと
そこには前に見たルービックキューブ


あの時から触られていないのか
面の色はバラバラなままだった。








……ぐちゃぐちゃだ。








諦めようとした風磨への気持ちも、

断ち切ろうとした顕嵐への未練も、





私は全部が曖昧で

何ひとつ揃ってる面がない











「…悪りぃ」

『違うの…、ごめん…っ』





俯いたのと同時にぽたりと落ちたそれが膝を濡らす。





私の頭にふわりとタオルが被せられて、

後頭部に添えられた風磨の手が
ゆっくりと私を抱き寄せた。











風磨は…なにを思ってこうしてるの?

どうしてこんなに私に構うの?










そうやってちゃんと聞けたら、

こんなに泣かずに済むのかもしれない











結局私は傷付くのを怖がって

曖昧な心の色を、揃えようともしないんだ。










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さくら - 続きが気になります。更新プログラム待っています。頑張ってください。 (2018年8月11日 21時) (レス) id: 0ab5784288 (このIDを非表示/違反報告)
shiori - 続きが気になる、、もう更新ないのかな(/ _ ; )待ってます。 (2017年12月2日 10時) (レス) id: 5e3e58aa2a (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 更新待ってます!待ってます!本当に! (2017年3月7日 23時) (レス) id: 30c8826ed2 (このIDを非表示/違反報告)
しーり(プロフ) - 更新待ってます! (2017年1月21日 16時) (レス) id: a86e6796d0 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 久しぶりに読み返しました、やっぱり面白いな、と、、、。更新待っています (2016年12月25日 22時) (レス) id: d02e576091 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハル | 作成日時:2016年4月30日 21時

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