大遅刻 ページ12
どこからともなく流れ出した曲に、逃げ惑っていた住人たちは足を止めた。
一刻も早く逃げなければならない状況で、なぜ彼らは足を止め、その顔に笑みを浮かべたのか。
「トリーブだッ！」
突然、誰かが叫びながら上空を指差した。
それにつられて顔を上げた数人が、驚愕と歓喜に目を見開く。
そこにいたのは、無骨な有人戦闘機とは不似合いな白髪の麗人。
その細腕に振られた剣の残光は、まるで白帯のように夜空を裂いて翻る。
そして次の瞬間には、外殻を剥がされた操縦席から、発症者が地面へと叩きつけられた。
頑強なゼントラーディ人だからこそ、面倒な手加減などせずに処理できる。
その情け容赦のない対応に、歓声を上げていた一部の住民が顔を強張らせたのは言うまでもない。
『シトー、観客がいるんだからもっと丁寧に…』
住民の熱が引いたことに気づいたヴァーチが、無駄だろうと思いながらも、無線越しにシトーへ呼び掛けてみる。
が、返ってきたのは案の定、他人の同情すら消してしまう程の無愛想な声だった。
「死にはしない。寧ろいい薬だろう…我を忘れて暴れまわった代償だ。骨の一本や二本は差し出してもらう」
唯一の救いは、これが観客には聞こえていないということだ。
ヴァーチは的確に硬い装甲の間を貫きつつ、ピピと行動しているルカに無線を飛ばす。
そろそろ厄介な大型機の制圧も終わる頃だ。この辺りでワルキューレと合流し、本格的な制圧に移る。
尤も、彼女たちは「制圧」ではなく「鎮圧」がメインなのだが。
だが、武力行使を行うのは変わらない。
それが誰の手で行われるかが違うだけで、なにかを傷つけてしまうことには変わりない。
第三者から見れば、その行為にどんな理由があっても視界に映るものは同じ。
どれだけ綺麗な建前を用意しようと、破壊は破壊でしかんなく、暴力は暴力でしかない。
「…ルカ、そっちは…」
『ヨユーっすよ。てか、あいつらマジで仕事する気あるんすか？大遅刻じゃねーか』
ルカの言うとおり、暴動が始まってから30分は経過している。というのに、ワルキューレが現れる気配はない。
もう日が暮れ始めている。急がなければ、夜目が効かなくなるのも時間の問題だ。
とはいえ、人外とも言えるトリーブのメンバーには昼も夜もあまり関係はないのだが。
「そう言うな。女は準備が長いものだ」
無線の向こうで轟音を撒きながら、ルカが大きくため息をついた。
続く
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糸圭卯格(プロフ) - 「進まない」一部変更いたしました。 (2017年5月5日 12時) (
レス) id: 00eb5803e0 (このIDを非表示/違反報告)
糸圭卯格(プロフ) - 綺羅さん» 初めまして綺羅さん！このところ忙しくて中々更新ができない状況にあります(-_-;) 落ち着いたら順次更新する予定ですので お待ちいただければ幸いです 。 お待たせしてしまい申し訳ございません_(._.)_ (2017年5月4日 16時) (レス) id: 00eb5803e0 (このIDを非表示/違反報告)
綺羅(プロフ) - 更新楽しみにしてます！！頑張って下さい！ (2017年5月2日 19時) (レス) id: 36ff8fed08 (このIDを非表示/違反報告)
糸圭卯格(プロフ) - 「輸送機」修正します(；一_一)申し訳ありません… (2017年2月3日 20時) (レス) id: 11761a9c1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：糸圭卯格 | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/bbs/inkscope
作成日時：2017年1月23日 23時
