永遠なんて*9 ページ9
慌てて駆け寄ると、倒れる前に彼女が自らの手でそばの椅子に掴みなんとか地面に体をぶつける事は免れたようだ。
でも、近寄って分かる。その手は小さく震えている。
肩を支えて、立ち上がるのを手伝った。
腕を掴んだ時、あれ と思う。
こんなに、彼女の腕は細かったっけ。
俺が彼女に問いかけようとした声は、映画館の店員さんの声によって消えていった。
「すみません、掃除をしたいのですが……」
「あ、すみません。今外に出ます」
店員さんに小さく頭を下げてから、自分の足で歩けるようになった彼女の肩を抱きかかえる形で外に向かった。
映画館から出たところで、俺は足を止めた。
それに気づいてAも足を止める。
肩を抱きかかえる形のまま、目線は前に向けさっき言い損ねた言葉を出す。
「……前にも聞いた事あるけど、もう一回聞かせて。俺に隠してること無い?」
これは、何かがおかしい。
そんなことは誰が見たって分かる。
彼女は少しの沈黙の後、静かに肩に回している俺の腕を外した。
「…最近貧血気味なんだよね、私。さっきのもいきなり立ち上がったせいだと思う」
「……本当に?」
「本当本当!貧血の薬飲むのと、メイク直さなきゃだからちょっと待ってて」
その言葉を言い残して、立ち去ったAを横目に小さくため息をつき近くの椅子に座った。
視線はスマホに落としたまま、考える。
本当に彼女は貧血なのだろうか。
もし違うのであれば、どうして俺には言ってくれないのだろうか。
答えのない問いを悶々と考えているとパタパタとした足音と共に彼女が戻ってきた。
泣いたせいで崩れていたメイクも、少し青白くなっていた顔も全て元通りになっていて 女子の技術ってすごいなと改めて思う。
映画を見る前の明るさに戻ったAは、「お腹空いたー!」と言う。
「じゃあ、どっか店 入ってお昼にする?」
「そうしよ!」
「ショッピングモールの中にする?外出る?」
「外!」
その言葉通り、ショッピングモールから外に出た。
まだもやもやとした心を抱えながら。
83人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
菊香(プロフ) - はるさん» 返信遅くなり申し訳ありません(;;)わわ、そうなんですか!もう一度見つけてくださりありがとうございます〜!とても嬉しいです* (2019年11月15日 5時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 瑞稀さん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません(;;)嬉しいお言葉ありがとうございます〜!* (2019年11月15日 5時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
はる - 菊香さん» やっとこの作品見つけました!前に読んで感動してコメントしようとしたら、履歴とか全部消しちゃってこの作品見れなくなったんですよね...。でも、約1年がたった今やっと見つけられました!本当に見つけた時は嬉しかったです!また読んで感動しました゜・(つД`)・゜ (2019年10月15日 20時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - 途中から彼女さん病気なのかな…って思ったらやっぱり病気で。まさかうらたさんの方が永遠の命なのにはびっくりしました。ラストシーンは泣きました。最後のセリフは本当にぐっときました。 (2018年11月15日 0時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 蝶遊さん» ひぇ…ありがとうございます〜!!嬉しい限りです(^^)これからもマイペースに頑張ります!コメントありがとうございました* (2018年11月9日 21時) (レス) id: 7947e41304 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ