永遠なんて*14 ページ14
時間が再び動き出した。
周りの悲鳴が上がり、トラックは甲高いブレーキ音と共に止まった。
そのすぐそばでしゃがむA。
勿論彼女は怪我をしておらず、ただボーっとして目線をどこかへ漂わせていた。
この目に映らない、何かを探すように。
Aの瞳から一筋の涙が零れ落ちた時、そのまま糸が切れた操り人形のようにゆっくりと崩れ落ちていった。
そんな彼女を今すぐ助けたいのに。
近寄ってあげたいのに。
彼女の隣に、もう俺はいない。
無駄に大きな翼で空に浮かびながら、Aが救急車によって運ばれていく一部始終を見ていた。
今は俺の姿は誰にも見えていない。いわば、透明人間のようなものだ。
きっと、Aは我慢をしていたのだと思う。
食欲も失い、体も痩せ細くなり、足元もおぼつかなくなってしまう。
そんな中、俺と普通の日常を過ごそうとしてくれていたんだろう。
それに俺には直前まで病気のことは言わないことにしていたんじゃないか、とAの性格から想像がつく。
その時、ふと思った。
どうして、Aは今救急車で運ばれていったんだ?
少し体調が優れないだけなら意識はあるはずだし、何より崩れるようにして倒れていった。
ある、1つのことを思いついて 心臓がどきりと鳴った。
血は流れているが一生止まり続けないこの心臓。
そんな心臓がうるさく、俺の中で響いている。
_____もし、Aが嘘をついていたとしたら?
勿論、病気にかかっている事も寿命を宣告されたことも本当のことなんだろう。
けれど、その中でも嘘をついているとしたら。なるべく心配をかけまいと、彼女なりに考えていたのだとしたら。
………本当に、彼女の寿命は半年ほどなのか?
違う、とも言い切れる。
現に彼女はそう言っていたんだ。
“半年も無い”と。
待てよ、半年も無い?
それ以上は生きれないという事だ。
逆に言うと、それ以下で死ぬ可能性も大いにあるというわけで。
急いで翼を羽ばたかせ病院を探し回った。
彼女が向かった場所なんて知らない。ひたすらに探す。
うるせぇよ、俺の心臓。
どくどくどくどくって、いい加減鳴り止めよ。
なんで、終わんないんだよ。
なんで、鳴り止む事はないんだよ。
こんなに活発に動くなら、あいつを助けて。
俺の心臓なんて、もう動かなくていいから。
早く。早くこの不安から俺を解放してくれ。
「……ぁあ、くっそ」
なんでこのうるさい心臓は、止まってくれないのだろう。
(どうか、勘違いのままでいさせて)
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菊香(プロフ) - はるさん» 返信遅くなり申し訳ありません(;;)わわ、そうなんですか!もう一度見つけてくださりありがとうございます〜!とても嬉しいです* (2019年11月15日 5時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 瑞稀さん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません(;;)嬉しいお言葉ありがとうございます〜!* (2019年11月15日 5時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
はる - 菊香さん» やっとこの作品見つけました!前に読んで感動してコメントしようとしたら、履歴とか全部消しちゃってこの作品見れなくなったんですよね...。でも、約1年がたった今やっと見つけられました!本当に見つけた時は嬉しかったです!また読んで感動しました゜・(つД`)・゜ (2019年10月15日 20時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - 途中から彼女さん病気なのかな…って思ったらやっぱり病気で。まさかうらたさんの方が永遠の命なのにはびっくりしました。ラストシーンは泣きました。最後のセリフは本当にぐっときました。 (2018年11月15日 0時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 蝶遊さん» ひぇ…ありがとうございます〜!!嬉しい限りです(^^)これからもマイペースに頑張ります!コメントありがとうございました* (2018年11月9日 21時) (レス) id: 7947e41304 (このIDを非表示/違反報告)
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