永遠なんて*12 ページ12
俺の言葉に、Aが目を見開いた。
「………な、んで、」
「…前に、俺聞いたよな。不死身と人間が付き合うってどう思う?って。あの時、Aは構わないって言ってたけど、実際に今どうだ?本当に、そう思う?」
そう言って目を鋭くさせ、一歩Aに近づいた。
すると彼女の体はビクッと震える。
その様子を見て、「ほら」と口角を上げた。
「無理、だろ?」
当たり前なんだ。
いきなり、恋人から人間じゃないと告げられて実際にその姿を見て怖がらないはずが無い。
怯えるはずだ。恐怖心でいっぱいなはずだ。
分かってた、分かってたのに。
心は、こんなにも痛い。
「だから、」
“別れよう”
そう、言おうとした。
言おうとしたのに、言えなかったのは体に感じた温もりのせいだ。
ギュッと、彼女は俺を抱きしめた。
鼻に香るこの、匂いが嫌いだ。
折角決意したのに。
彼女を手放したくなくなる。
「…怖くない、って言ったら嘘になる。貴方の正体に驚きすぎて、今も心臓バクバクだよ」
「でも、」と彼女は瞳を俺に向けた。
その目には俺しか映っていない。
恐怖心だとか様々なものが混ざり合っているようには見えなかった。
「うらたくんのことが好きって気持ちは、変わらないよ」
今度は、俺が動きを止める番だった。
ギュッと、Aが俺を抱きしめる力を強めた。
俺は、今までのように彼女の体に腕をまわす事がどうしても出来ない。
ただ、やられるがまま抱きしめられていた。
「……うらたくんが言ってた事、合ってるよ。よく分かったね、さすが」
「…やっぱ、お前、」
「うん、病気だよ。残り半年も無いって言われちゃった」
彼女の震えた声を聞いて、それに対して強まる抱きしめる力を感じて、何も言う事が出来ない。
言葉が何も出てこない。
あんなに俺の正体を隠すための嘘の言葉は出てくるのに、どうしてこういうときに限って言葉が出てこないのだろう。
「…もし、それが全部無くなって。永遠の命だったらな、って思ったの。そうでもしないと寿命にびくびくして光を失ってしまいそうで」
きっと、彼女にとって不死身だと偽る事は一種の現実逃避だったのだろう。
けれど、辛かったはずだ。
永遠なんて無いと、自分が1番分かっているはずだから。
「貴方の正体を知ってしまったから、もう別れなくちゃいけないの?」
そんなの、嫌だよ
そうやって呟いた彼女の声は、何も聞こえないこの世界ではひどく鮮明に聞こえた。
83人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
菊香(プロフ) - はるさん» 返信遅くなり申し訳ありません(;;)わわ、そうなんですか!もう一度見つけてくださりありがとうございます〜!とても嬉しいです* (2019年11月15日 5時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 瑞稀さん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません(;;)嬉しいお言葉ありがとうございます〜!* (2019年11月15日 5時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
はる - 菊香さん» やっとこの作品見つけました!前に読んで感動してコメントしようとしたら、履歴とか全部消しちゃってこの作品見れなくなったんですよね...。でも、約1年がたった今やっと見つけられました!本当に見つけた時は嬉しかったです!また読んで感動しました゜・(つД`)・゜ (2019年10月15日 20時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - 途中から彼女さん病気なのかな…って思ったらやっぱり病気で。まさかうらたさんの方が永遠の命なのにはびっくりしました。ラストシーンは泣きました。最後のセリフは本当にぐっときました。 (2018年11月15日 0時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 蝶遊さん» ひぇ…ありがとうございます〜!!嬉しい限りです(^^)これからもマイペースに頑張ります!コメントありがとうございました* (2018年11月9日 21時) (レス) id: 7947e41304 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ