永遠なんてものがあるのなら。【urt】

永遠なんて*11 ページ11

「………え、」



小さな呟きが彼女の口から発せられた。

勿論、Aは死んでいない。
トラックに轢かれてなど、いないんだから。




俺と、A以外の人々は全員が指先1つも動かしてなどいない。
比喩なんかじゃなくて、固まっている。

まるで電池が切れた人形のように、瞬き1つしてない。
物音1つもしない、気味が悪いほどの静けさに包まれたこの状況。


全ては、この俺の手で。




突っ込んできたトラックはAにぶつかる50センチほど前に止まっている。



俺はトラックに近づいて、運転手の顔を覗きこんだ。





「あは、見て。こんなびびってる。こんなびびるなら突っ込んでくんなよって」


「…………たくん、」







俺の足元らへんに座り込んでいるA。
その瞳は怯えたような理解できていないような色々な感情が渦巻いているように見えた。


やっぱり、怯えるのが普通だよな。
だから、今まで言いたくなかった。
ずっと隠してきていた。





「………うらたくん、貴方は、何者？」


「………」


「……その翼も、何。その角も、何」


「………」


「……貴方は、一体、何を隠してたの…？」





震えた声で言う彼女からの問いかけに、ふぅーと息を吐く。

太陽の光に照らされて、アスファルトの地面には影が出来ていた。
その影は、しっかりと俺の頭から伸びる角と背中から生えている大きな翼を映し出していた。


………いよいよ、種明かしの時間か。


心を決め、目をAに向けた。






「お前さ、不死身じゃないだろ？」




ビクッと彼女の肩が震えた。

それくらい、分かる。
彼女の嘘くらい見破れないほど俺は鈍感じゃない。





「きっと、病にかかってるよな？それも寿命が言いわたされるくらいの」


「っ、」


「だからお前は、永遠なんてここ最近言うようになったんだ。自分にはあと少ししか無いから。永遠を信じたくて」





………本当、ここ最近のAの言葉は心臓に悪かった。

永遠だの、不死身だの。


まるで目には見えない拷問を受けているような気がして。





「……不死身は俺の方なんだ」


「…そんなっ、」


「俺が何者か、聞いてたよな？…ルシフェル。この世ではそう呼ばれている」


「ルシフェル……」




あぁ、ついに言ってしまった。

彼女の目が動揺に染まっていくのは一目瞭然。



きっと、もう、俺は君の隣にはいられない。





「…………A、さよならしよう。それこそ、永遠に」

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