続きを*9 ページ9
「………私、会いに行くから。もし記憶が無くても絶対、会いに行く」
「うん、待ってる」
彼女の声はしっかりとしていて、心から良かったと思える。
きっと、希望を持てたんだ。
その時、いつものように視界が掠れてきた。
ここで意識を失って夢から醒めているんだ。
けれど、今回はどこかいつもと違うような、そんな気がした。
この夢はもう二度と見れないんじゃないか、って。
「ありがとうね、いろいろと」
彼女もそれを感じ取っているのか、まだ充血している目でふわりと俺に笑いかける。
俺もそれに応えるように微笑んでみせた。
「また、会えるよね？」
不安げに聞いてくる彼女。
さっき自分から会いに行くとか言ってたくせに、何を言っているのだろうか。
そんな突っ込みを心でしつつ、俺はしっかりと頷いた。
「俺と君は絶対、またどこかで巡り会える」
俺の言葉に彼女もしっかりと頷いた。
(まだ、終わりなんかじゃない)
◆
「っ、」
ハッとして目が覚めたとき、知らない間に俺は天井に手を伸ばしていた。
まるで、誰かに手を伸ばしているような。
その時、彼女の笑みが浮かんだ。
「………覚えてる」
俺の記憶は消えていない。
先ほどまでの彼女の姿、声、言葉、全て残っている。
彼女は果たして無事に目覚める事が出来たのだろうか。
もし、目覚めるそのときには俺のことはもう覚えていないのだろう。
それでも構わない。
彼女がこの世界のどこかで生きているなら。
と、その時気づいた。
「……名前、」
名前、聞いていない。
あれほど話していたのに、お互いに名前を聞いていなかった。
もし聞いていたらまた会える手がかりになっていたのに。
けれど、その不安定な関係でよかったなと思える自分がいた。
名前も知らない、場所も知らない、年齢も知らない。
けれど確かに俺たちはあの不思議な世界で出会い、未来を見つけたんだ。
俺は、その日から あの夢を見ることは無くなった。
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翡翠琥珀(プロフ) - もう二年以上経ってるこの作品を今更読んでしまったことに後悔いています。もっと早く出会うべきだった…！！めっちゃ最高でした。短編なのにこんなにもグッとくる……他の作品も読ませていただきます！！ (2020年9月26日 18時) (
レス) id: 387b2ce801 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 月読さん» わわ、ありがとうございます…本当に嬉しいです…！！短編だったので内容が伝わったのか不安でしたがそう言われてホッとしました(笑)マイペースに頑張っていきます(^^*)コメントありがとうございました* (2018年8月17日 11時) (レス) id: aea442a5e9 (このIDを非表示/違反報告)
月読(プロフ) - かなりの短編なのに、こんなにも感動してほっこりとした気持ちになるとは思っていませんでした…最後は感動で鳥肌と涙が…笑 完結お疲れ様でした！これからも頑張ってください、応援しています( ；∀；) (2018年8月17日 1時) (レス) id: 720095c5ce (このIDを非表示/違反報告)
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