続きを*8 ページ8
「きっと、友達とか家族とかいるんだろ？もう一度会いたいだろ？」
「っ、」
「なら目覚めないと。こんな世界に君が執着する理由なんて無い」
拭っても拭っても溢れてくる彼女の涙に思わず苦笑い。
薄い桜色の唇が震えながら小さく開く。
「……貴方は、私に忘れられてもいいの？」
「…………いいわけ、ないだろ」
彼女と過ごした時間は本当に僅かだ。
交わした言葉も数えられるほどしかしていない。
けれど、俺の心は彼女でいっぱいになっていたんだ。
こんなこと言っているけど、本当は忘れて欲しくない。
彼女の中の俺が消えて欲しくない。
今この一瞬でさえも無かったことにされたくない。
(けれど、俺は＿＿)
「生きて、ほしいんだ」
たとえ彼女の中の俺が消え去ろうとも、無かったことにされようとも。
俺は彼女に生きていて欲しい。
ちゃんと目覚めて欲しい。
「俺の記憶がどうなるかなんて、分からないんだろ」
「………そう、だけど」
「なら俺が君の分まで覚えてるから」
もし彼女が忘れていても、俺がその分覚えていたらいい。
その代わり、彼女にはちゃんと、
「お願い、生きて。希望を持って。まだ君の未来は続いているから」
「…………ずっと、怖かった」
ポツリ、と涙も収まった彼女は話し始めた。
「突然、こんな世界にやってきて。1人で、いつまで続くかわからない。いつ目覚めるのかわからない。そんな状況、すごい怖かった」
「うん」
「でも、貴方が現れて。少し、明るくなれた。声をかけることが怖かったから出来なかったけど、話しかけてもらえてよかった」
「うん、」
「………一度、未来を捨てようとした人が願って良いのかな。生きたいって、思っていいのかな」
震えた声で呟く彼女に、そっと手を伸ばす。
そして、割れ物を扱うように優しくその体を抱きしめた。
彼女の体温がちゃんと伝わる。
呼吸もしている。
まだ、生きている。
「いいに決まってるでしょ。俺含めて皆それを望んでるよ」
「……そっか、」
嬉しそうに言葉を零した。
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翡翠琥珀(プロフ) - もう二年以上経ってるこの作品を今更読んでしまったことに後悔いています。もっと早く出会うべきだった…！！めっちゃ最高でした。短編なのにこんなにもグッとくる……他の作品も読ませていただきます！！ (2020年9月26日 18時) (
レス) id: 387b2ce801 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 月読さん» わわ、ありがとうございます…本当に嬉しいです…！！短編だったので内容が伝わったのか不安でしたがそう言われてホッとしました(笑)マイペースに頑張っていきます(^^*)コメントありがとうございました* (2018年8月17日 11時) (レス) id: aea442a5e9 (このIDを非表示/違反報告)
月読(プロフ) - かなりの短編なのに、こんなにも感動してほっこりとした気持ちになるとは思っていませんでした…最後は感動で鳥肌と涙が…笑 完結お疲れ様でした！これからも頑張ってください、応援しています( ；∀；) (2018年8月17日 1時) (レス) id: 720095c5ce (このIDを非表示/違反報告)
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