遠くへ*12 ページ12
「美味かったー!ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
シュークリームを食べ終わったらしい坂田が、スマホを取り出す。
「10時半…か」
時間を確認したのか。ていうかいつまでここにいるつもりだろう。
「いつ帰るつもりなんですか?」
「んー、きっと日付変わった辺りが限界かな」
え、限界ってなんのこと?
質問と答えが噛み合ってない気がするが、まぁいいや。
…なんか、坂田といて大雑把に物事を考えるようになってきたような気がする。
「さて、まだ時間はあるしゆっくりAちゃんの話聞こうかな。……話してもらえる?」
私は頷いて、海の方を見た。
「悩みって言っても、そこまで死にたいだとかそういうものじゃないんです。きっと、私よりも悩んでる人や辛い経験をしてる人もいるだろうし。そんな人達に比べたら、全然私なんて軽いものだと思います」
「でも、今日家に帰らずに暗くなるまで公園にいた」
そうやろ? と言われて はい と返す。
そして私は目を瞑り、話したいことをまとめようと考えた。
家族、友達、自分、いざ話そうとすると頭の中がぐちゃぐちゃになってこんがらがってしまう。
「ゆっくりでええよ。まだ時間はたっぷりある」
その時、坂田の優しく落ち着いた声が耳に入って リラックスして話し始めることが出来た。
「……私の環境は不幸では無かったと思います。親もいるし、学校に行ったら一緒に行動する友達もいる。そう考えたら、恵まれていたと思います」
けれど、本当の幸せとは程遠かった。
「でも私は、誰にも本音が言えませんでした。親にも、友達にも」
それが私にとって、一番最善な生き方だと思っていたから。
「もし、本音を言ってしまったら。それは違うと思うよ とか あっちの方がいいな なんて言ったら。今、周りにいる人が離れていってしまうんじゃないかって。本音を言って傷つくくらいなら、本音を言わずに周りの意見に委ねて生きるほうが楽なんじゃないか。そう思ったんです」
……………それは、ずっと偽ってきた隠して生きてきた私への一種の罰かもしれない。
「……そしたら、いつの間にか私がなんなのか。私が言いたい事は、求めている事は、一体何か分からなくなってしまったんです」
自分の気持ちが分からなくなってしまった と、私は小さく言葉を発した。
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ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2022年5月25日 17時) (レス) @page18 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - しふぉんさん» わわっありがとうございます!私の心についてとか書いたところもあるのでそう言って頂けて嬉しいです本当にありがとう!私もしふぉんちゃんだいすき。コメントありがとう* (2019年6月30日 19時) (レス) id: 2f8e2c41d8 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 真央☆wrwrd!箱推しさん» わわ、嬉しいです!坂田さん切ないですよね…コメントありがとうございます* (2019年6月30日 19時) (レス) id: 2f8e2c41d8 (このIDを非表示/違反報告)
しふぉん(プロフ) - 号泣しました……切なくて今の私の心とかと少しリンクして、感情移入してしまって涙が止まりません( ; ; )だいすきです素敵なお話をありがとうございました。きっかちゃんだいすき。 (2019年6月30日 9時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
真央☆wrwrd!箱推し(プロフ) - 涙腺崩壊しました……(´;ω;`)さかたん… (2019年3月28日 2時) (レス) id: baec234195 (このIDを非表示/違反報告)
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