手を伸ばしても、君には届かない。(kz×短編集)

4-3 Fin. ページ11

砂原から電話が来たのは、その日から5日後のことだった。






あれから5日経った日曜日。
今日は特に用も無く、ベッドの上でごろごろとしていた。
あぁ、暇だ。


窓の奥の空は黒く歪んでいるようで、大量の雨が降っていた。
こんな日は、部屋で過ごすことに限る。


そんな時、テーブルの上に置いてあった携帯が着信を知らせる音楽を奏でながら
振動を繰り返していた。


「はい、もしもし。」

こんな日に誰だろう。


『俺、砂原。今時間ある？』

それは5日前に聞いた声が聞こえた。


「あぁ、今日は暇だ。」

そう答えると砂原は気を引き締めるかのように少し息を吐いた。


『ごめん、若武。
俺、嘘ついてたんだ。』

一瞬何のことを言われたのかが分からなかった。
でも5日前のことを思い出してハッとする。


「は…?」
嘘ついたってどういう…


ドク、ドク
心臓の鼓動が高まる。


『俺、あの日立花に告ったんだ。
立花をあの公園に呼び出して。』

砂原が言ったのはこうだ。


5日前、砂原はアーヤに告白した。
まさか俺に見られていたとは思わず、誤魔化してしまった。
でもやはり嘘をついているという罪悪感とある気持ちがあり、俺に今日話すことにした。


『……俺と立花、付き合ったんだ。
ずっと隠し通すことはできないから皆には言おうと思っていた。
やっぱり1番はkzのリーダーである若武だと思ったんだ。』

俺は、何も言えなかった。


『ごめん、若武。』

申し訳無さそうな砂原の声。
何に対しての ごめん なのだろうか。

嘘をついてごめん?
それとも…


「……なんで、砂原が謝るんだよ。
良かったな、砂原。おめでとう!」

なぁ、俺は今嬉しいんだ。


『………ありがと。』

大切な仲間の恋が実ったんだから。



「じゃあ、な。」

なのに、

通話の切れた携帯をベッドに投げる。
自分もベッドへ身を投げ、仰向けの状態のまま天井を見た。


嬉しいはずなんだ。

＿＿＿なのに、なんで、
天井がぼやけて見えるのだろう。


嗚呼、喜ぶべきなのに。


心のどこかで泣く声がする。



＿＿＿＿どうか、あいつの元へ行ってしまわないで。

と嘆く声が聞こえる。


嗚呼、ダメだな。
瞳を閉じると、一筋雫が零れた。











声に出した言葉は強がって。
心は静かに泣いている。

キミが他の誰かのものにならないという確信は、
一体どこから来ていたのだろうか？



好きだったよ。


おめでとう。







Fin.

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