昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ14)

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となり*14 ページ14

正直言うと、驚きよりも怖いの方が大きい。

歌い手のとなりの坂田。ということを除いたら、見ず知らずの成人男性だ。
そんな男性に、会った覚えが無いのに名字を呼ばれた。

……怖い。恐い。

ただ単に私が忘れているだけなのかもしれない。
でも、怖いものは怖いのだ。

けれど、そのことを除いたら。
名字を呼ばれたということ以外を考えたら。

「……かっこ良かったな。」

今まで、マスクした写真とかは何枚も見てきた。
けれど実際会うと、よりイケメンで。カッコよくて。

そして、正直言うと。
名字を呼んでくれた声がとてもカッコよかった。

イヤホン越しでもない、マイク越しでもない、さかたんの声。
呟いたからだろうか、少し掠れていて。いつもの声より低く感じて。

「やっぱ、好き。」

小さく呟いて、瞼を閉じた。

……

朝起きると、昨日帰ってきたまま寝ちゃったからシャワーを浴びてないし、服もそのまま。
もちろんメイクも落としていない。

今日が仕事休みで良かった。
心からそう思った。

とりあえずシャワーを浴びようと思い、お風呂場に向かった。

髪を洗いながら、昨日の出来事の結論を出した。

生放送や呟き、他の歌い手さんからの評価を見る限りさかたんはとても良い人だ。
誰に対しても優しく、明るい。
そこも好きなポイントであるのだけれども。

そんなさかたんが、企みがあって私の名前を調べたわけではないだろう。
そして、仮にさかたんが実は内面腹黒くても何故会った事の無い私をターゲットにしたのかも分からない。

だから、きっと昔会った事があったけれど私は覚えていないのだろうという結論に至った。
ここでも、私が忘れているのになんでさかたんが覚えているのだろうという謎が残る。
けれど、さかたんが悪い人ではないと信じているからこういう結論になった。

もし、本当に私が忘れているのだとしたら。

「失礼なこと、しちゃったな。」