昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ35)

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となり*35 ページ35

「まぁ、普通考えもしないだろうな。歌い手のとなりの坂田と同級生の坂田が同一人物だなんて。」

「………はい。本当に申し訳ない…。」

うらたんにフォローされながらも、やはり負い目を感じてしまっている。
チラリとさかたんの方を見る。
気づいていなかったということに怒られてしまうかも、という気持ちがあったのだ。

さかたんは、私をジッと見つめて俯いた。

「俺は瀬川さんのこと覚えてたのに……悲しいわ…」

しょんぼりとさかたんが言うので、私も慌ててしまう。

「え、あ、ほ、本当に申し訳ないと思っています…。すみません……。」

そう言いながら頭を下げる。
すると頭の上で、あははと笑う声がした。

「嘘や、嘘。怒ってへんから顔上げて?」

「え?」

顔を上げると、さかたんが面白そうに笑っている。

……怒って無さそうだし、大丈夫なのかも。

うらたんと連絡先も交換し、皆満腹となったのでお会計へと移った。

3人で割り勘となり、私はとてもホッとしている。
2人とも奢るよと言ってくれたけれど、今回は私も引き下がらなかったのが良かったのかもしれない。

「瀬川さんの泊まってるとこってどこら辺?」

店から出ると、さかたんに聞かれてだいたいの場所を伝える。

「じゃあ、俺送る「あほ。」

さかたんの言葉にうらたんが言葉を被せた。

「お前だけ、録音終わってねーよな?瀬川さんは俺が送るからお前はさっさと録音しろ。」

「いや、明日こそ絶対するから!」

「そのセリフ、もう3回目。どんだけ待たせれば気が済むんだよ。今日早く寝て明日の朝すぐに録音。分かった?」

「う………はい…。」

渋々さかたんが頷いたのを見て、うらたんが私の方を見た。

「ってことで、俺送るから。」

もうだいぶ遅い時間。
1人でまだ慣れない東京の街を歩くのは勇気がいる。

「はい、よろしくお願いします!」

ここは、善意を受け取るのが賢いはず。