結局は ページ16
しんと静まり返った談話室は『冷たい』と感じる。Aはようやく自分がしたことに気がついたのだ。
A「あ……ヴィル…ご、ごめんなさい…大丈夫、ですか…?」
手先が凍るように冷たい。足も小さく震える。Aはヴィルの事を突き飛ばし、ソファから落としたのだ。
ヴィル「大丈夫よ。アタシこそ、ごめんなさい」
彼の胸のあたりにうっすらと霜が降りている。ヴィルはペンを振ってその霜を消した。
ヴィル「苦しかったのよね…分かってあげられなくて…アタシの責任よ」
A「ち、違います…!私が…」
ヴィル「さっきのが、初めてだったわよね」
話の筋が見えず、Aは戸惑ってしまう。
ヴィル「『やめて』って敬語を外して言ったの」
A「え…」
ヴィル「Aが敬語を使って話す理由は分かっているわ。でも…」
そう言いかけて、ヴィルは静かに立ち上がり、こちらへ歩く。
ヴィル「A…あなたは…アタシの事、本当に好きなわけではないわよね?」
その一言は、とても重く、痛かった。
A「何を言っているのですか…?好きに決まってるでしょう…?」
ヴィル「でも、それは『友人』としてだとアタシは思うのよ」
A「……」
そう言われて何も言い返せなかった。
A「……友人以上の気持ちって…あるのでしょうか…」
Aのその言葉に、ヴィルは悲しそうな顔をする。
あんなに痛かった心臓は、何事もなかったかのように静かに脈を打っていた。
ヴィル「あるのよ、A。あなたには…まだ分からなかったのね……アタシは…Aにその思いを分かってもらうのには…ふさわしくなかったのね……」
300人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Fの小説 | 作成日時:2021年4月9日 21時