ご近所のワタナベさん。 (ページ29)

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仕事をして、帰って、寝て、また仕事に向かう。

当たり前のはずなのに、心に穴が空いた様な感覚は拭えなくて。

あの他愛もない時間で、これほどまでに翔太さんの存在が大きくなっていたのか、と実感する。

ふっか当たって砕けていいと思うよ、このままじゃAちゃんが辛いだけっしょ?

ふっかダメだったら辰哉くんがまた慰めに行くからさ。

しばらく変わらない日々が続いていた。翔太さんとはほぼ会わず、辰哉くんから励まされる、そんな日々。

やっぱり、どうにかしなきゃ。

これじゃあきっと、翔太さんにも、辰哉くんにも迷惑を掛けるままだから。

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「…あの！！」

今となっては数少ない、朝翔太さんに会える日。挨拶よりも先に切り出していた。

「今日、何時に、…帰られますか、」

勢いに乗って言い出したは良いが段々と気まずさが襲ってきて、声が小さくなる。

でも、翔太さんにはちゃんと届いたようで。

『早めがいいなら、定時で上がってくるけど』

と不思議そうな顔をしながら答えてくれた。

「本当ですかっ！ご迷惑お掛けします、お願いします！！」

それだけ言い残して、会社へ向かう。
いわゆる猛ダッシュ、と言うやつ。

『え、…は？！』

そんな声が聞こえたけど、私も私で余裕が無いから。と必死に言い訳をしながら走った。言い逃げした。

でも、…これで私も先延ばしに出来なくなった。

どう転んでも、今日で全部、終わるんだ。

A帰ったら、決着、付けてくる。

辰哉くんにそれだけ送信して、仕事に向かった。

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