ご近所のワタナベさん。 (ページ21)

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『…嫌だったら、突き放してね』

そう前置きをすると、辰哉くんに抱き寄せられた。

顔が周りに見えないように。

「ごめ、っ…なさい、」

『いーのよ、気にしなくて。この状況の女の子放っとく方が無理なの。』

そう言って暫く胸を貸してくれた。

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「だいぶ、落ち着きました。」

流石に面識があるとは言え、ほとんど関わりのない人を相手に大号泣する訳にはいかずに、必死に我慢しながら落ち着かせた。

2回目でこれだ。申し訳ない。

「本当に、ごめんなさい…」

『良いって、気にしないで？』

そうやって笑う辰哉くんには、何も聞かれてもいないのに全て見透かされている気がして。

『あ、ねえAちゃん、これから時間ある？』

「ありますけど…」

『じゃあちょっとで良いから付き合ってよ！』

きっと気を遣ってくれたんだと思う。

辰哉くんに素直に連れられて、近くのゲームセンターへ。

騒がしい店内が、逆に今は心地良い気がした。

『Aちゃん、何か好きなキャラとかないのー？』

クレーンゲームの並ぶ通路を通りながら辰哉くんに聞かれる。

「あっ、これ、好きです」

そう言って指を指す。と、

『っし、これね？辰哉くんが取ったげる』

そう言って2、3回動かすだけで本当に取ってくれた。

「上手…！！」

『でしょ？何か欲しいのあったら言ってよ。Aちゃんの為なら意地でも取るから！わら』

やっぱりこの人は、人との距離の詰め方が上手い。それに、気持ちを汲み取るのも。

何があったか聞いて来ないのも、少しでも気を紛らわせようと連れてきてくれたのも、全部。

「…ありがとう、ございます」

『ふは、良いから良いから。あ、あれ！一緒にやんない？』

その優しさに甘えてしまう。

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