ご近所のワタナベさん。 (ページ11)

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そんなこんながありながら、

……と言っても、これが大きなイベントのように感じているのは私だけなんだろうけど。

少し気まずくなった空気を変えようと、かかっている曲からよく聴くアーティストの話になったり、それこそ今日行くところで欲しいものは、なんて話をして。

『ん、着いた』

「おおっ…、初めて来た…！！！」

有名な、けど越してきたばかりの私にとっては初めて来る場所でもあって、別の意味でも胸が高鳴る。

『リアクションでか、行くぞ』

言葉とは裏腹に嬉しそうな顔をした渡辺さんに言われるまま着いていく。

化粧品に美容品、他にも服とか雑貨とか、私が見たいものにずっと付き合ってくれて。

『うわ、また戻んじゃん』

そう悪態をつきながらも、ちゃんと全部付き合ってくれた。

一通り気になるところは見終えて、フードコートへ。動き回っていた頃は忘れていた空腹感が、いい匂いに感化される。

『何か食べたいものは？』

「あ、あれがいいです！」

『ん、じゃあ俺もそれにしよ』

これでもか、と言うほど今日の渡辺さんは優しい。し、それに甘えてしまっている私がいる。

「え、私出しますから！流石に、ね、ほら、」

『いいから、連れ回されてくれたお礼』

「でも……」

『はい、取り敢えずこれは奢り』

お昼ご飯も出してくれて。モテちゃうんだろうな、なんて寂しさも感じながらも、こんな些細な会話でさえ嬉しくなってくる。

『うわ、うっま！』

『これ選んだの天才』

「いやいや、大袈裟ですって！美味しいですけど」

この楽しい時間が続けばいいな、なんて感じてしまった。

『あれ、なべじゃん。』

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