【QK】遠い背中を追いかけて【ini】 (ページ6)

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「乾さん……」

さも初めて聞いたかのように繰り返してみる。

乾さんは「はい」と小さく返事し、さらに続けた。

「乾だけど、好きな動物は猫です」

「ふふっ」

それも知ってます。

だけど、実際に目の前で自己紹介されたことが面白くて、そうやって和ませてくれたことが嬉しくて、思わず笑みがこぼれた。私のそんな様子にホッとしたように、乾さんも笑う。

おかげさまで、なんか少し緊張が溶けてきたかも。
胸の高鳴りはむしろ増しているのに、なぜだかそう感じた。

「乾さんは、どうしてここを通ったんですか？」

「僕、会社で働いてるんですけど、先輩からここがオフィスまでの近道って聞いたんです。で、結果、いつもの3分の4倍くらいかかってます」

「全然、近道じゃないですね」

「そうなんすよ」

渡辺さんあんなに豪語してたのに、という呟きと笑い声が微かに聞こえる。
彼の言う渡辺さんが私の知る渡辺さんならば、こうちゃんはこの道を通ったことがあるのだろう。もしかしたら、他のQuizKnockメンバーも。

あんなに遠くて掴めないと思っていた彼らが、少しだけ近くに感じられる。
隣を見れば、物理的に近い距離に推しがいる。

……なんだか、勘違いしてしまいそうだ。

…