蕩けたキスのリフレイン ( y.i ) (ページ6)

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本ページ6

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父以外の男の人を部屋に入れるのは初めてだった

3月にここで一人暮らしを初めて

4月にはもう学校に新任して

そっからはもうバタバタバタ

彼氏なんか出来るはずもなく

毎日仕事に追われる日々

だから自分以外の人がここにいることだけで違和感を感じる

夕飯はまだ食べてないらしいから

昨日から食べたいと思ってたカレーを作ると

ものすごくおいしそうに食べてくれた

片付け手伝います、と言ってくれたから

素直にお言葉に甘える

『ほんとにうまかったです』

私の隣でお皿を拭きながら

さっきから何度も褒めてくれる井ノ原さん

｢料理でそんな褒めてもらえたの初めてです｣

『そうなんですか？きっと照れて言えないんですよ

なんか久々にカレー食べた気がします』

そんなしみじみとした声で言われると

本当に嬉しいし泣きそうになってしまうんだ

誰かに褒められるなんていつぶりだろう

井ノ原さんはきっと優しい人

見た目からそれが溢れ出てしまっている

どうしてあの場所で倒れていたのか

それは聞かないでおこうと決めていた

理由なんていい

彼を助けられたなら、それでいい

『本、お好きなんですか？』

棚にずらっと並んでいる本

｢いちおう国語教師なので｣

昔から読書は好きだった

だから国語教師になろうと思ったのだ

古典はあまり得意でなかったから

中学教師を選んだ訳だけど

『僕も好きなんですよ』

｢そうなんですか…！これとか分かります？｣

『ああこれ買いました面白いですよね！』

そこから2人で本の話で盛り上がった

井ノ原さんは会話がとてもうまい

自分も話しながら人の話を引き出して

その話題をどんどん広げて、笑う

数時間前とは考えられないほど

弾けんばかりにくしゃって笑う人

心を許してくれたのかどうか分からないけど

楽しいって思ってくれてたら嬉しいな

久しぶりにお腹を抱えて笑ってしまった

魔法にかけられてるみたい

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