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ゆめのなか（Another）hkin ページ34

違和感を覚えたのは少ししてからだった。

2ヶ月、と言われた療養期間は、体感ではとっくに過ぎてるのに…どうしてか再開されない仕事。
休みなんて長ければ長いほど良いと思ってたけど、さすがにこれだけ休んだら仕事の方が不安になってきて。

「ねぇひかる…仕事、そろそろ復帰できると思うんだけど…」

「まだ大事をとったほうがいいよ。俺も心配だし」

「んー…でも、とりあえずマネージャーには連絡したいから」

「…そっ、か…じゃあ俺から連絡しておくね」

「うん…」

その違和感は日に日に増していく。

日付がわかるものがない。
退院してから一歩も外に出てない。
ひかるが外に行ってる様子もない。

でも、生活に必要なものは出てくるんだよね。

俺が違和感を抱き始めてることに、ひかるも気づいているみたいで、夕飯を作ってるのをじっと見てたらひかるから話し始めた。

「…変だなって、思ってる？」

「え？」

「今俺が作ってる料理、どこから材料出てるのかな…とか？」

「…」

「病院から帰ってから一度も外に出てないなぁとか、外の様子さえ見てないなぁとか？」

「ひかる…」

「…ねぇいのちゃん、ここなら誰にも邪魔されることもないし、仕事だってしなくて済むんだよ？嫌なケンカはなかったことになるし、事故の怪我だってもう痛くないでしょ？」

言われてハッとする。

俺、そういえば、病院にいた時からどこも痛くなんてなかったんだ。
その時はおかしいなんて思わなかったけど…今ならわかる。この状況は、おかしい。現実じゃありえない。

じゃあ…目の前にいるひかるは、、

「誰…」

ひかるじゃ、ない？

顔を上げて微笑んだ『ひかる』は言った。

「言ったよね、ずっとこのままがいいって」

「！」

「居てくれるよね、俺と」

この世界は、嫌なことが起こらなくて、ずっとひかると一緒にいられて…だけど。

「…ごめん。おれ、ちゃんとひかるのことに帰りたい」

「…」

「現実は辛いかもしれないけど、ひかるは向こうにしかいない。ひかるの所に帰りたい」

「そう…」

『ひかる』は少し悲しそうに目を伏せた。

「…ね、最後に教えて。あなたは誰？」

ひかるにそっくりで、正直、今だってひかるじゃないなんて信じられないくらい安心する存在だった。

あなたは…

『ひかる』はにっこり、おれに微笑んだ。

『……死神ってね、その人が一番大切な人にそっくりなんだよ』

「え、」

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