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チーズが重くなってきて少し残しちゃったけど…十分、慧の気持ちが伝わった。
「よし!次は薬!口移…」
「しないよ??」
あからさまに落ち込まないでよ。
というか、なんで口移しに拘るかなぁもう…
諦めてサイドテーブルの水を取ろうとした慧だったけど、
「い゛っ…」
「?慧、どしたの…?」
「いやっ、な、なんでもない…」
「ちょっと待って、なに、すごい痛そうだけど…」
テーブルの端に手首をぶつけて、しかも普通にぶつけたとは思えないほど痛がってて。
慧は隠そうとしてたけど無理矢理袖をめくったら手首に絆創膏が貼ってあった。
これって…
「…へへ、やっぱ慣れないことするもんじゃないねぇ」
「…いつ?」
「……さっき…」
絆創膏で隠しきれてない水膨れ。火傷跡だ。
おかゆ、作ってるときに…?
…高いチーズがなんだよ。重いおかゆがなんだよ。
こんなことに文句言ってた自分が憎い。
慧の体に傷がついたら、もう取り返しがつかないかもしれないのに。
「…慧、」
「…!ひかっ…」
慧が止める前に、火傷のそばにキスをした。
ごめんね、とありがとうの気持ちで。
「ウチのために、ありがと」
「…んーんっ…ごめんねひかる。あたしが、いっつもひかるに料理任せてるから…おかゆもマトモにつくれないの」
「そんなことない、おいしかったよ?」
「風邪ひいてるからなんでも美味しく感じるんだよぉ〜…」
「も〜こういうときばっかり謙遜しないで」
落ち込むほっぺたを両側から包むと、床を見てた目がぱっちり交差する。
「ほんとに美味しかったよ。ありがとう。慧が作ってくれた気持ちごと、ぜんぶうれしい」
「ひかる…」
「リクエストしてもいい?お昼は残り食べるから、夜は私の好きな梅でおかゆ作ってくれる?」
「…!うん!つくる!絶対おいしいの作るから!」
笑顔が戻ってよかった、なんて思ってたらそのままキスしてこようとしたから両手で押し戻した。
「こら!!またうつったらどーすんの!」
「え〜…」
じゃあ…と言ってこの間のお返しみたいにほっぺたにキスをしてくれた慧。
ふにゅふにゅの、柔らかい唇。
離れてから、今度はおでことおでこがくっついた。
「ひかるが、はやく良くなりますようにっ。…おまじないだよっ」
「ふふ、ありがとっ」
慧の愛にくるまったら、きっとすぐに治るね。
この前の慧の気持ちが少しわかった気がした。
Fin*
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作者名:みつあめ | 作成日時:2020年11月29日 0時