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「大丈夫だって、ほら、」



ひかるはそう言って前を歩く女の子を指した。
そりゃあ、こんな流されそうな中だからそういう子たちはいるけど…でも、女の子がやるのと男の俺たちがやるのじゃ違くない?


クラスメイトだっているし、見ず知らずだけど観光客もたくさんで…こんなに堂々と手を繋ぐなんて、したことなくて。


恥ずかしくて何も言えなくなる。
…ううん、違うよね。恥ずかしい以上に、嬉しくて何も言い返せなかった。



ほんとはこうして歩きたかったんだ。人目なんか気にしないで。


ひかるの言う通り、俺たちを見てる人なんていない。
周りはみんな自分とイルミネーションをどれだけ綺麗に写せるかに夢中になってる。

厚手で袖の長いコートは、制服なんかよりずっと俺たちの秘密を隠してくれた。


触れた肩と腕が、ずっとずっと愛おしく思えた。ただ手を繋いだだけなのに、それまでぶつかっていたのとはなんだか違って。


あったかくて、うれしくて、繋いだ手に力を込めた。



ずっともどかしかった。
バスは違うし、東大寺も薬師寺も入れ違い。班行動でばったりなんて奇跡は起こらないし、食事も全部クラスごとだし…。
飛行機だけは、偶然通路を挟んだ隣になれたけど。


全然会えなかった分、ひかるとこうしてるだけで幸せだと思った。


修学旅行をひかると一緒に。

準備期間からずっと思い描いていた夢が、今、ちゃんと叶ってる。


あんなに憂鬱だった修学旅行が、こんなに楽しいって思えるなんて。


ひかると手を繋いで見上げたら、ただ歩いてるだけだったアーケード街も、アーチ状のイルミネーションもなんだか特別綺麗に見えて。



「…ひかると見られて、よかった」



俺は心からそう思った。











アーケードを抜けた先、メイン会場には大きなお城みたいなイルミネーションが聳え立っていた。
イルミネーションっていうか、もはや建物。

それこそ某テーマパークのお城前かのように記念撮影大会が開催されている。



「あ、あれ大ちゃんじゃない?」

「うわ!あいつ女子と写真撮ってる!」



いや、たぶんあれは女子たちからお願いされて『撮らされ』てるんだよ。意外とモテるんだよなぁ大ちゃん。

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作者名:みつあめ | 作成日時:2020年11月29日 0時

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