▽▲ 寝ても覚めても 2 ▲▽hkin,inhk (ページ42)

今日:1 hit、昨日:19 hit、合計:56,181 hit

こわがり hkin ページ42

「大ちゃんがさ～笑」

「その話すんなって！笑」

けらけら笑って、いつもどおりの様子だけど。

隣に座る俺にだけわかるSOS。

俺の服を少し摘んで引っ張った時が合図なんだ。

「といれ行ってこよっ」

「おれも行く」

「ひかる、ついてくんなしっ」

ゆっくりできねーじゃん、なんて言ってまた笑いをとったいのちゃんは、自らもけらけら笑いながら楽屋を出た。だけど、

「っ、」

ドアが閉まった瞬間、ぷつりと糸が切れたように涙をこぼす。

「っ…ごめっ…」

「ん、大丈夫だから、ね。向こう行こ？」

「ん…」

ゆっくり、いのちゃんの背中に手を回して、支えるようにして歩く。

使われていない部屋に入って鍵を閉めた。
いのちゃんはもはや立っていられないらしい。

ゆるゆるとへたりこむ細い体を支えて、ちょっと場所は悪いけどその場に座らせた。

「んっ…ひっく……」

「つらかったね。泣いていいよ」

「んんっ…」

涙は出てるのに、声を押し殺して泣くいのちゃんは毎回苦しそうで、いつもこう言ってしまう。
辛くて泣いてるのに、泣いてること自体が苦しそうだなんて、俺が見ていられない。

「うっ…うぅっ……」

「大丈夫、大丈夫」

「ひかるっ…」

いのちゃんは、本当の自分を知られることが怖くて、つい自分を作ってしまう。
テレビで認知され始めたことも大きく関係して、ますますいのちゃんはその仮面を外すことができなくなった。

本当の自分と、作り上げた『求められる自分』

その差があまりに激しすぎて、たまに歪みが限界を迎えて、急に涙が止まらなくなるんだ。

いのちゃんは、みんなの前で泣きたくないって気持ちも強くて、限界が来てもさっきみたいに無理して笑顔を作る。

でも本当は泣きたくて、泣きそうで仕方ない。

だからこうやって俺にSOSをくれる。

「ひっく…あぅぅっ……」

「大丈夫だからね、本当のいのちゃんは、俺が知ってるから」

「んっ…」

「泣き虫でも、怖がりでもいいんだよ。俺は、そういういのちゃんも大好きだからね」

「うぅ…ひか、るぅっ…！」

抱きしめて、背中をさすって、大丈夫、大好きだよって伝わるように。

いのちゃんがつらいなら、絶対側で助けてあげるから。

「ひかるっ…ありがと、だいすきっ…」

「俺も大好きだよ、いのちゃん」

双子みたいな俺たちにしかわからないことがある。

今も、これからも、それでいい。

Fin