▽▲ 寝ても覚めても ▲▽hkin,inhk

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「慧の気持ち嬉しいけどさ、いくら本心じゃなくても女の人と楽しそうにしてるの見たくない」

「ん…」

「慧のこと変な目で見てくる人とか、狙ってくる人は減ったけど…やっぱり心配だし」



光の心配をしていた慧だが、同じくらい惚れられやすかった。

2人は既に互いに将来を決めた相手、つまり、"一般的な"言い方をすれば婚約者だ。
しかし、そうは思っていない客たちに好意を寄せられることが頻繁にあった。

それならばとお揃いの指輪を贈り合い、
慧がそれを薬指に付けた日から、慧へまとわりついていた視線はだいぶ控えめになった。

恋人の有無をしつこく聞かれる前に、薬指の輝きが諦めさせてくれるのだ。


ただ、光は水仕事が多いため、チェーンに通した指輪をネックレスのようにして身に着けている。

それに気づいて身を引く客もいれば、左手の薬指ばかりを気にして全く気が付かずにアタックしてくる客もいる。慧より虫よけ効果は薄かった。

当の本人は、効果があると思っていたようだが…
未だに根強く光に向けられ続ける熱い視線に、慧はずっとヤキモキしていたのだ。



「…ねぇ、今日そこの席に座ったはじめてのお客さん、いたでしょ？」

「うん」

「…あの人、ぜったいひかるに惚れてた」

「え？そんなことないと思うけど…」

「そんなことあるんだってば！もぉ、ひかる、そーゆうの疎いから心配なの！」



光の腕の中、慧は光を見上げて頬をむくれさせる。



「あの人ずーっとひかるの左手見てたんだから！惚れましたって顔にかいてあったもん！
……だからね、その人に宣戦布告しちゃった。ひかるはおれのだからって」

「え！？もぅ…」

「あーあ、ひかるも手につけれたらいいのに…」



光の左手を握って、なにもない薬指を寂しそうに触る。



「慧が心配なら、つけようか？」

「んー…。でも、水仕事の邪魔になるでしょ？それに、取ったり着けたりして無くしちゃったら嫌だもん…」

「そっか。…何か考えなきゃだめだね。慧が心配しないように」



ぽん、と頭を撫でられると、慧はまた愛おしそうに光に頬を寄せる。

不安だと言いつつも、こうして自分のことを一番に考えてくれているとわかると、途端に優越感でいっぱいになる。


宣戦布告の言葉に驚きはしたが否定しない光に口元を緩ませて、一層強く抱きつくのだった。




*Fin

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