ブラックコーヒーとミルクティー【closed】 ページ43
カフェを閉めたあとのお話です。
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「…いのちゃん、お客さんナンパするのやめなね」
「え〜なにぃ?妬いてるのひかるぅ」
ふざけた調子で慧が言えば、光は作業の手を止めなかったが…
返ってこない返事に、慧はテーブルを拭く手を止めて振り向いた。
「…んもぉ、怒んないでよぉ…」
「べつに怒ってない」
「怒ってるじゃぁん…」
カウンターの奥で黙々と食器を洗い続ける光。まだこちらを向いてはくれない。
その様子に、今度は慧がむくれてしまった。
恋人に指摘された『ナンパ』にも、茶化して答えたのにも、慧なりの理由があったのだ。
それも、できれば知られたくないような。
ただ、このまま黙り通すわけにもいかないだろう。何より、光が納得していない。
それは慧としても望んでいないことだ。
下唇をゆるく噛んだあと、慧は意を決して口を開いた。
「…だって不安なんだもん…」
「………不安って、なにが?」
「…ひかる、お客さんに惚れられやすいから…」
“俺が気を引けば少しでもお客さんの興味がひかるから逸れると思って…”
俯き加減で呟いた慧に、光はやっと手を止めた。
そうして、呆れたように息を吐き出す。
慧がお客さんに馴れ馴れしく絡む…ほとんどナンパのような行動の理由が、まさか自分のためとは思っていなかった。
「…もー。そんなことしなくていいのに」
「やだ!だっておれのひかるなのに…」
手に持った布巾を指でいじいじと触りながら、唇を突き出してぼそぼそ呟く。
「みんなひかるのこと好きになるんだもん…」
「…慧?」
いじけている慧の控えめな上目遣いが、やっと光の視線と交わった。
少しだけ、時が止まる。
「…俺は慧以外見てないし、これからも見るつもりないけど?」
「!…ひかる〜っ」
しょぼくれていた目がみるみる開かれて、零れ落ちそうに潤む。
パタパタと走っていってカウンターの奥の光に飛びつくと、光はそれを受け止めて優しく抱きしめた。
「…怒ってごめん。嫉妬だった」
「ううん、いいの」
慧は光の背中に回した腕をさらにきつくして、光の肩に頬を寄せた。
光もそれに応じるように慧の頭を撫でる。
一日中もやもやとしていた2人の心が、溶けて合わさっていく。
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みつあめ(プロフ) - ぱにきゃにさんへ:コメントありがとうございます!とても嬉しいです。同じく、お隣なだけで有頂天になれるいのひか担です(*´ `*)同志さん大歓迎ですので、ぜひぜひ楽しんでいってくださいね。 (2021年8月3日 21時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ぱにきゃに - いのひかが隣同士なだけでわいてしまうどうしようもないいのひか担です。いのひか担とあまり出会えなくて、みつあめさんがいのひかが好きだと知り嬉しくてついコメントしてしまいました汗 (2021年8月3日 19時) (レス) id: 0875e1e998 (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - ino22さん» コメントありがとうございます!いのひかの絡みって面白いし可愛いし癒されますよね〜!手探りで書いているので、褒めてもらえて嬉しいです。甘えたな伊野尾さんをもっと書いてみたくなりました♪ (2020年10月27日 22時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ino22(プロフ) - 私も慧くん担当なんですけど、いのひかのラジオとか絡みとかめちゃ好きで慧くんが光くんに甘えてるの見るのが夢だったので叶えてくださってありがとうございます!笑毎週土曜日ほんとに幸せなんですよね〜!これからも話書くの頑張ってください!ずっと見ます笑 (2020年10月26日 0時) (レス) id: 4477761edb (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - teentitansthemeさん» コメントありがとうございます!嬉しいです〜!ほんと、可愛くて大好きです 笑 拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします…! (2020年7月12日 18時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みつあめ | 作成日時:2020年7月5日 3時