・ ページ42
けいさんとひかるさんは全くタイプの違うひとに見える。
だけど、ふんわり上手く溶け合って、このカフェ全体の雰囲気を作っている。
絶妙な掛け合いは聞いていて面白くて、それをBGMみたいにして一日中このカフェにいられそうなくらい。
でも、なにより私は…
カウンターで、コーヒーを淹れるひかるさんの横顔を見ながら過ごす時間を素敵だと思ってしまっている。
二杯目のコーヒーを飲み干して思う。私、やっぱりコーヒー派みたい。
ひかるさんの左手薬指をちゃっかり確認しちゃったりして。
わたし、きっといいお店を見つけた。
「…おねーさんだめだよ。ひかるはおれのなんだから」
「!」
耳元で聞こえた声に驚いて振り向けば、相変わらずふわりと微笑むけいさんだった。
でも、その目は…私に勝ち誇ったように笑いかける。
けいさんがトントンと自分の鎖骨のあたりを指で叩いた。
首を傾げる私を他所に、カウンター内に入って行くけいさん。
見せつけるように、ひかるさんにわざとぶつかって、こちらを振り向かせる。
…あぁ、そういうことか。
わかってしまってからは、それはもう笑い話。おかしくて、思わず声に出しそうなほどに。
けいさんの言葉、ひかるさんの言葉。
けいさんの視線、ひかるさんの視線。
ひかるさんがけいさんのことを語るとき、どうしてあんなに暖かかったのか、その理由さえわかってしまった。
このカフェの雰囲気がさらに甘くなったように感じる。
「…お会計、お願いします」
苦笑して、潔く私は負けを認めた。
「ありがとうございました。…いのちゃん、レジお願い」
「はぁーい」
伝票を受け取ったけいさんの左手薬指に光るシルバーのリング。それと同じデザインのリングが、ひかるさんの胸元で光っていた。
・
負け…というよりは、最初から勝負など始まってもいなかった。
私はただ、土曜の昼下がりに素敵なカフェを見つけた。ただそれだけだ。
「美味しかったです。ごちそうさまでした」
「ありがとうございました!また来てくださいね〜」
「…はい。また」
でも、悪い気がしないのは何故だろう。素敵なひとたちだから、だろうか。
今日会ったばかりのひとなのに、そんなことを思わせるふたりはやっぱり素敵なのだろう。
「…うん。また来よう」
カフェを出て呟いた。また、来よう。
ブラックコーヒーとミルクティーの素敵なハーモニーを楽しみに。
FIN*
161人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みつあめ(プロフ) - ぱにきゃにさんへ:コメントありがとうございます!とても嬉しいです。同じく、お隣なだけで有頂天になれるいのひか担です(*´ `*)同志さん大歓迎ですので、ぜひぜひ楽しんでいってくださいね。 (2021年8月3日 21時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ぱにきゃに - いのひかが隣同士なだけでわいてしまうどうしようもないいのひか担です。いのひか担とあまり出会えなくて、みつあめさんがいのひかが好きだと知り嬉しくてついコメントしてしまいました汗 (2021年8月3日 19時) (レス) id: 0875e1e998 (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - ino22さん» コメントありがとうございます!いのひかの絡みって面白いし可愛いし癒されますよね〜!手探りで書いているので、褒めてもらえて嬉しいです。甘えたな伊野尾さんをもっと書いてみたくなりました♪ (2020年10月27日 22時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ino22(プロフ) - 私も慧くん担当なんですけど、いのひかのラジオとか絡みとかめちゃ好きで慧くんが光くんに甘えてるの見るのが夢だったので叶えてくださってありがとうございます!笑毎週土曜日ほんとに幸せなんですよね〜!これからも話書くの頑張ってください!ずっと見ます笑 (2020年10月26日 0時) (レス) id: 4477761edb (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - teentitansthemeさん» コメントありがとうございます!嬉しいです〜!ほんと、可愛くて大好きです 笑 拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします…! (2020年7月12日 18時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みつあめ | 作成日時:2020年7月5日 3時