▽▲ 寝ても覚めても ▲▽hkin,inhk

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そっと腕の痣を撫でて、いのちゃんを抱きしめた。

いのちゃんは、いつも以上に軽くて、壊れてしまいそうで。


…ねぇいのちゃん。やっぱり私、雄也とのこと、応援できないや。



「ねぇっ…目、覚ましてよっ…」

「え…？」

「だって……。だって、いのちゃんにそんな涙流させたのって、その男でしょ…！」

「その男って…。ゆうやは、ちゃんと、彼氏…だもん、」

「彼氏でもなんでも！いのちゃんのこと愛してたら、こんなひどいことできるはずない！」



頭の良いいのちゃんは、心のどこかでは本当は気づいてるはず。

だけど、自ら目を逸らしてる。


なんでそんな男に、しがみつかなきゃいけない？縛られなきゃいけない？

なんで…


あの男だって…どうしてこんなことができるんだろう。いのちゃんを、傷つけるようなこと…

いのちゃんを好きだったらこんなことしない。

少なくとも、私は。



「…っ、私、おかしいって、ずっと思ってた…」

「え…？」

「いのちゃんが幸せならそれでいいのかなって思ってたけど、でもっ…ずっとずっとおかしいって思ってたっ！！」



私が感情をぶつけたら、いのちゃんは目を丸くしていて。

でも、今まで我慢していたそれはもう止まらない。



「髪型変えたことも、髪染めたことも…苦手な香水つけてたのも、最初は純粋に相手のこと想って、自分の気持ちはちょっとだけ横に置いて、健気に頑張ってたんだと思う。
だけど…今はもう苦しいんでしょ？ちがう？」

「っ…」

「もうそれって彼のために頑張ってるんじゃない、アイツの言いなりになってるんだよ。
自分の気持ち偽って、必死に取り繕って…いのちゃん、そんなんじゃなかったじゃん！
嫌なものは嫌ってちゃんと言える、自分持ってるいのちゃんに戻ってよ！！」

「ちがっ…ゆうや、は、悪くないよっ…」

「どこが悪くないの！？クラスの男子とも話せない、連絡先も消されて…そうしないと怒られてたんでしょ！」

「っ、だって、それは…ゆうやが、そうしてって…」

「スマホチェックされるのも？行動制限されるのも？全部っ…全部あの男の言いなりじゃん！
いのちゃんはそれでよかったの？ほんとは、嫌だったんじゃないの！？」

「〜っ…ちが、あたし、は…」



捲し立てる私から目を晒して、俯いて。

少ししたら、ひくひくと肩が揺れ始めた。そして、



「ふぇ……ちがうよぉっ…だって、だって…！」



顔を上げたいのちゃんは、苦しそうに涙を流してた。

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