ファースト・ラブ Ⅱ (ページ20)

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「ナナ、OSTのお仕事頂いたよ」

マネージャーさんから言われたのはそんな言葉で、OST、と小さく復唱するみたいに私の口から流れ出た。

昨年、初めてOSTに参加することになってから二度目だった。歌詞カードを見てさっと目を通すとまた恋愛系の歌で、私に歌えるのかな、と消極的になる。

「この日にレコーディングね。えっと……この、スタジオだから」

音源まで貰って、練習しておいてね、と言われたため一度曲をかけて歌詞を見ながら聞いてみることにした。どうやら今回のドラマは学校が舞台の恋愛ドラマで、テーマは初恋。主人公が恋を自覚する回に流れるらしい。

これはOSTだから、私たちが普段歌ってるようなアップテンポで激しめの曲というわけじゃなくて、叙情的でゆっくりなテンポでメロディーも柔らかく暖かいものだった。

目で歌詞をなぞって、頭で理解して、そうして聞いていくうちに、歌詞にのめり込んでしまって。

「……なに、これ」

言葉通り、涙が止まらなかった。歌詞のフレーズが、私がオッパを好きだということに気づいたときの感情とそっくりで、まるで私のことなんじゃないかと思うくらい、当てはまっていて。

涙を拭っても止まらないから、それを見たマネージャーさんがぎょっとして「A？どうしたの」と背中をさすってくれて、それに縋ってしまった。

泣いてしまうほど、オッパのことが好きなんだ。恋愛ソングに自分を重ねてしまうほど、オッパのことが好きで、どうしようもなく好きで、仕方ない。

苦しい、会いたいのに会えない。恋と友情を天秤にかけることはできない。どうしたらいいの。こんなの、分からない。胸が痛くて、苦しくてたまらないのに、それを治す方法を、私は知らない。

「きっと疲れてるのね。ワールドツアーも終えたばかりだし、今日はもうゆっくり休みなさい」

「……ごめんなさい、さっき、あんなに泣いちゃって」

「むしろ、もっと頼ってくれてもいいんだからね？私は貴方たちのマネージャーなんだから」

宿舎まで送り届けてくれたマネージャーさんが私の頭を撫でて「ゆっくり休んで」と声をかけた。

玄関で見送って、泣き疲れか酷く倦怠感を感じてすぐベッドに入った。

どうしようもない感情に、これからどうやって向き合っていけばいいのか分からないまま、疲れには抗えず眠りについてしまった。