65＿ ページ5
オフィスへ向かうと一斉に視線がAに刺さった。何事だろうとその視線を疑問に思いながらも自分の席に腰かける。
すると、提出するはずだった書類が机上には一枚もなかったのである。いや、確かに昨日出掛ける前に用意したはずなのだが。
どうしたものかと周りを探したが、それらしきものは一枚も見当たらない。
「はよ」
すると背後からルイが寄って来たのが声でわかったので、Aはルイに書類を知らないかと訊ねた。
「あー、昨日暇だったからオレがやった」
「あ……そうなの。ありがとう」
なくしたわけではなかったとホッとするAにルイがつっこむ。
「なぁにがありがとうだっつの。ちょっと来い。どうせもう今日は仕事ねぇんだから」
「え、うん……」
足早にオフィスを出て行くルイを、同じく急ぎ足で追いかけるA。二人はロビーのソファーに向かい合って座る形になる。
何か話でもあるのかとAがきょとんとしていると、ルイが馬鹿か、といきなり暴言を吐いてきた。
「な、なに……？」
「噂広がってんぞ。クロムウェルの顔が悲惨になってるって」
「そんなに悲惨かしら？」
「別に普通だけど普段あんたが無駄に綺麗に振る舞ってるからそうなるんだよ。まあ違和感あるっちゃある」
で、とルイは話を続ける。
「昨日あんなに楽しそうに出掛けてた人がどうしてこんなになってるわけ？」
オレでよかったら話してみ、とルイは言う。大体の女はこういう時愚痴ることで解消されるのを知っているルイは、Aなら愚痴りはしないだろうが、そう提案してみる。
Aもルイが頼れる人であることを知っているため、躊躇うことなくルイに本音を話すことにした。
「私、おかしいわ。分かりきってる答えを否定しようとしてるの」
そしてAは昨日の出来事を全部伝える。食事して、【氷菓】に行って、告白して、それで……。
「ほぼ振られたようなものなのに、そうじゃないって思い込みたがってる」
それで顔がそうなったのか、とルイは苦笑した。話を聞く限り初恋ではないらしいが、今のAはどう見たって恋愛初心者だ。確かに今まで恋愛で不自由しなかったからこそ、不自由した時の対処法がわからないのかもしれないが。
美人っていうのも難しいもんだな、とルイは初めてそんなことに気付いた。
「……飯は?」
「え？」
「奢ってもらったの？もらってないの？」
仕方ないから少しだけヒントを上げようかとルイはAを甘やかした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 232人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
久我(プロフ) - 藍琉さん» はい、覚えてます！こちらも読んでくださりありがとうございます！そうですね、夢主のタイプによって親近感の湧き具合は異なりますからね〜。私もシャル側です笑 こちらが終わり次第フェイの方の再スタートを切るのでフェイ夢はもうしばらくお待ちください>< (2016年8月10日 13時) (
レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉 - 以前フェイの作品を読ませていただいていたものです。此方の作品も読ませていただきました！今回わりと客観的に読んでいるせいか夢主よりクロロやシャルに共感することが多いです(笑)もう少しで完結するようですが、続編を楽しみにしております。 (2016年8月10日 11時) (レス) id: d2e4b0bb58 (このIDを非表示/違反報告)
久我(プロフ) - めこさん» めこさん、こんにちは！はい、私もまだクロロが書けるとなると嬉しいです！これから続編を作成しようと思っているところですので、続編でもよろしくお願いします(´∀`*) (2016年8月10日 10時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
めこ(プロフ) - 続編決定おめでとうございます！久我さんの小説大好きなので続編と聞いてとても嬉しいです。これからも頑張ってください！ (2016年8月10日 9時) (レス) id: 89a16ac7e5 (このIDを非表示/違反報告)
久我(プロフ) - キャンディさん» これからもキャンディさんに楽しんでいただけるような文章を書いていきたいと思います。今回はありがとうございました！ (2016年8月10日 7時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：久我 | 作成日時：2016年7月23日 22時
