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大丈夫、きっと会える。
どこからともなく湧き出る自信を胸に秘め、Aは【短時間】の運転する車に乗り込んだ。
「待たせてごめんなさい。行き先はルイから聞いている?」
「はい、もちろんでございます。このヨークシンの東と伺っております」
ちょうど1時間で到着致しますよ、と【短時間】は告げる。
「しかしどうされましょう?お疲れの様子ですからゆっくり向かいましょうか?」
そんな顔をしているのだろうか、と今朝鏡で自分の顔を見た時に何の違和感も感じなかったAは思う。
ただ自分では気付かない自分の変化があるというのはよくあることだ。
「そうね。お願い」
ここは彼の優しさに甘えてもう一度Aは目を閉じた。
そういえばヨークシンに来てから、夜遅くに開始される競売のおかげであまりよく眠れていなかった。
その後Aが東部へ到着したのは14時のこと。あんなにスピードを大切にする【短時間】が1時間で辿り着けるというその距離を、4倍以上の時間をかけて到着したとは、きっとAが眠っている間、相当な回り道を重ねたのだろう。
そんな彼に申し訳なく思いながらもAは【短時間】の車から下車する。
「ありがとう」
*
ヨークシンの東。低ランクの賞金首が問題を起こし始めている。
そんな情報だけではAだってどこをどう捜せばいいのかわかったものではないのだ。
そもそも何の問題なのかもAは知らない。
ルイに聞こうにも電波はなんと圏外。
かといえAが到着した周辺に街などなさそうである。ひたすらに自然が豊かな場所だ、という印象しか正直抱けないこの地。人さえ見かけない場所だった。
ルイは「とりあえず真東まで」と言っていたが真東など一体ここ以外にまだ東端があるのかと聞きたいくらいである。Aの目の前など海だ。そして後ろは林。
【短時間】はこんな場所に来て疑問に思わなかったのだろうか。いや、命令を忠実に守ったら関係ないのか。案外そういうものなのかもしれない。
さてどうしよう。人の気配など全くない。そんな地で何が、と遠い目でAは海を眺める。眺めれば海の先に小さくではあるが陸が見えた。
そこが真東、なのか。
とりあえずそう決めつけるしか当てはない。ということはこれは海ではなく湖なのかもしれない。
全てにおいて何だかよく分からないままAはとにかくその水域を通ろうと考えた。そうするしかない。
何たって便利な【制裁者の特権ーアウトサイドフォースー】があれば、確かに渡るのは困らなかった。
こうしてAは“待ち人”となったのである。
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久我(プロフ) - 藍琉さん» はい、覚えてます!こちらも読んでくださりありがとうございます!そうですね、夢主のタイプによって親近感の湧き具合は異なりますからね〜。私もシャル側です笑 こちらが終わり次第フェイの方の再スタートを切るのでフェイ夢はもうしばらくお待ちください>< (2016年8月10日 13時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉 - 以前フェイの作品を読ませていただいていたものです。此方の作品も読ませていただきました!今回わりと客観的に読んでいるせいか夢主よりクロロやシャルに共感することが多いです(笑)もう少しで完結するようですが、続編を楽しみにしております。 (2016年8月10日 11時) (レス) id: d2e4b0bb58 (このIDを非表示/違反報告)
久我(プロフ) - めこさん» めこさん、こんにちは!はい、私もまだクロロが書けるとなると嬉しいです!これから続編を作成しようと思っているところですので、続編でもよろしくお願いします(´∀`*) (2016年8月10日 10時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
めこ(プロフ) - 続編決定おめでとうございます!久我さんの小説大好きなので続編と聞いてとても嬉しいです。これからも頑張ってください! (2016年8月10日 9時) (レス) id: 89a16ac7e5 (このIDを非表示/違反報告)
久我(プロフ) - キャンディさん» これからもキャンディさんに楽しんでいただけるような文章を書いていきたいと思います。今回はありがとうございました! (2016年8月10日 7時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久我 | 作成日時:2016年7月23日 22時