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面白半分でクロロの死体の頭部を掴み上げるマフィアにAは、これまでに感じたことのない憤りを感じていた。
ひっ叩いてやりたい衝動を懸命に堪えてAは踵を返す。
何も見ていないと、何度も何度も言い聞かせてAは来た道を引き返した。
きっと頭の良いクロロが何らかの好都合に繋がるからこうしたんだ。死んだなんて認めない。返事さえまだ貰っていないのに世を去られては困る。
それこそ許せない。
___いや。
そこでAは何かに気付いたようでもう一度クロロの死体を振り返った。
「死んでないわ……」
ない。なかった。彼は無事だ。
右手首にAが残した手錠がなかった。つまりクロロは生きている。
よかった、とAは胸を撫で下ろすと、その日はもうホテルへ戻り、落ち着いた様子で眠りに就いた。
きっとそれだけで大分安心したのだろう。
*
翌日。そろそろAも協会へ戻らなければならない頃になってきた。
別にそこへ属さなくとも単独で活動することは可能である。しかしAは友人の紹介で協会へ属して活動を続けているため、このように行動に制限が出てしまうのだ。
と思っている側から早速ルイからの着信があった。
「どうかした?」
『どうかした、じゃねー。こっちじゃあんたの安否に大騒ぎだ』
というのもやはり競売の話が報道されたからだろう。
「じゃあ生きてたって報告してくれるかしら?」
するとルイからは怒声が飛ぶ。
『戻って自分で言え!!』
「え、ええ、必ず戻るわ」
一体なんで怒っているのだろうとAは疑問に思うも、言葉にするのこそルイの逆鱗に触れそうなので止した。
『ホテルの下で【短時間】が待ってる。急いでそれに乗れ。なんだか上の奴等があんたに至急で出動命令を出してる』
ったくヨークシンに行く理由をちゃんと言わないからこうなったんだぜ、とルイ。顔は見えなくとも呆れているルイが思い浮かんだ。
「どうしても待ってくれないの?」
『ああ。悪いがあんたの目的は後回しにしてくれ』
「ところで何で私にそんな命令が下ったのかしら?」
『ヨークシンで低ランクの賞金首が動いているらしい。そしてあんたもちょうどヨークシンにいる。それだけの理由』
最初はクロロの件もあり、国境を越えるのには躊躇いがあったのだが、まあ同じヨークシンに留まれるのなら問題はなかろうとAは了承する。
「わかったわ。ヨークシンのどこへ向かえばいいの?」
『とりあえず真東まで』
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久我(プロフ) - 藍琉さん» はい、覚えてます!こちらも読んでくださりありがとうございます!そうですね、夢主のタイプによって親近感の湧き具合は異なりますからね〜。私もシャル側です笑 こちらが終わり次第フェイの方の再スタートを切るのでフェイ夢はもうしばらくお待ちください>< (2016年8月10日 13時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉 - 以前フェイの作品を読ませていただいていたものです。此方の作品も読ませていただきました!今回わりと客観的に読んでいるせいか夢主よりクロロやシャルに共感することが多いです(笑)もう少しで完結するようですが、続編を楽しみにしております。 (2016年8月10日 11時) (レス) id: d2e4b0bb58 (このIDを非表示/違反報告)
久我(プロフ) - めこさん» めこさん、こんにちは!はい、私もまだクロロが書けるとなると嬉しいです!これから続編を作成しようと思っているところですので、続編でもよろしくお願いします(´∀`*) (2016年8月10日 10時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
めこ(プロフ) - 続編決定おめでとうございます!久我さんの小説大好きなので続編と聞いてとても嬉しいです。これからも頑張ってください! (2016年8月10日 9時) (レス) id: 89a16ac7e5 (このIDを非表示/違反報告)
久我(プロフ) - キャンディさん» これからもキャンディさんに楽しんでいただけるような文章を書いていきたいと思います。今回はありがとうございました! (2016年8月10日 7時) (レス) id: 11983860b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久我 | 作成日時:2016年7月23日 22時