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其の四 ページ5

どうやら、私は本当に横浜に来てしまったらしい。

そのせいで、気が遠くなった少女を少年が支える。


「アハハハハハハ……」


狂ったように笑い続ける私を彼はガクガクと揺さぶるが、当然効くはずもなく。


「本当に大丈夫?」


その一言でピタリと笑い声が止まった。

変人扱いされるのだけは御免のようだ。


「まあ、一応は。──そういや貴方、名前は?」

「中島……敦だけど」

「へぇ、中島敦か。敦って呼んでいい?」


少年は、コクリと頷く。


「君は?」

「私は、城平A」

「A…さん?」

「そんなに堅苦しくなくていいよ」

「じゃあ、A…ちゃん」

「そう、それがいい!」


Aは笑った。

つくづく綺麗な子だなあと感心してしまう。

空腹で盗みでもして生きようと考えていたところ、倒れている女の子を助けた。

──当初の目的は何処へ行った…

そう思っていると。


「何…あれ…」


Aが震える指で指した先は川。

正確に云うと、川に生えるようにして突き出ている二本の足だ。


トプン


その二本の足は沈んだかと思うと、

また突き出てきて、今度は鳥たちに襲われ始めた。

Aはともかく、普段から表情豊かな敦は真っ青だ。


「ええい!」

「え、敦!?」

「助けないと!」


何の前触れもなく、飛び込んだ敦。

とりあえずAも持っていたステッキを放り出し、川に飛び込んだ。

川の水の冷たさに、ようやく生きているという実感が湧いたのだった。

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作者名:勇魚 | 作成日時:2018年4月22日 16時

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