青いタイダイ屋さん (ページ7)

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出会い編7 ページ7

「いらっしゃいませ。
こちらにどうぞ。」

ここで働き始めて、一週間が過ぎた。

接客にもやっと慣れ始めて、ちょっとだけ
余裕というものも、でてきた。

「最近あのTシャツ屋さん、見えませんね。」

「あ、ほんとだね。
きっと本業が忙しいんだよ。」

「本業？」

「あ、言ってなかったっけ？
彼はね、ミュージシャンなんだよ。」

「え？ミュージシャン？」

「そうだよ、でもここではタイダイ屋さん。Tシャツ屋さんだけどね。」

「何でここではTシャツ屋さんなんですか？」

「さて、なんでだろうね。

うーん、そうだなぁ。

染めものは、彼の趣味なんじゃない？」

「趣味？」

「それをやっていると、心が落ち着くというか、安心するんじゃないのかな？」

「あー、なるほど。」

「誰にも邪魔されない所で、自分の好きなことをする場所が欲しかったんじゃないのかな？」

君ならわかると思うんだけどね。(笑)」

あーやっぱり見抜かれてた。
私が現実逃避して逃げてきたこと。

そりゃぁ、そうよね。
カバンひとつとスマホしか持ってなかったんだから。

「わかってたんですね。」

「まぁね。(笑)」

「そんな私を何で受け入れてくれたんですか？」

「あなたが助けを求めてた気がしたから。」

「え？それで？」

「そうだよ。
そういう私も同じなんだよ。
だからわかるんだよ。

じつは私もね、助けて貰った人がいてね。

だから私も誰かのお役にたちたくて。」

「そうだったんですね。」

「あ、そうだ。
ちょっと用を頼んでいいかな？」

「あ、はい。」

「パン屋さんに行って頼んである物をもらって来て欲しいんだ。」

「わかりました。
すぐにいきますか？」

「そうしてくれるかい？」

「はい。」

「外は寒いから、上着ちゃんと着てってな。」

「はい、わかりました。」

私は部屋に戻り、赤色のパーカーを着て自転車に乗り、パン屋さんに急いだ。