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横子さんの憂鬱② ページ29

横子side

この店かしら？

倉子さんから貰った地図とスマホをにらめっこ。

いつになったら慣れるのかしら、このスマホに。(笑)

私、横子、

世間から言わせると、アラサーという部類に
入るらしい。

パッと見は、昭和生まれに間違われるんだけど、実は平成生まれなの。

良く言えば、落ち着いている？

悪く言えば、古めかしい？

どっちにしても、今はパートナーもいないし、好きな人は・・・いないわけでも、ないのだけれど、告ってもいない。

倉子ちゃんに誘われてこの店に来たのだけれど、

新しい出会い、あるのかなぁ。

店のドアを開けると、カウンターに倉子さんが座っていた。

その前には、背の高いすらっとしたイケメンが立っていた。

この店のマスターかしら？
それに、隣にいる優しそうな人はどなたかしら？

「くまさんよ。」

「くま？
名前がくまさんなの？」

そう言うと、倉子ちゃんはお腹を抱えて笑い始めた。

「おおくらです。」

「私がね、(笑)くまさんって、(笑)呼んでるの。(笑)」

よっぽどツボにハマったらしく、倉子ちゃんの笑いが止まらない。

「そんなに笑ったら、シワが増えますよ。」

「ほら、またそういう事言うから～(笑)」

すかさず、相方らしき人からフォローが入った。

「帰ったらパックするから、大丈夫。(笑)」

そ、そういう問題？

確かに倉子ちゃんは少し天然のところがあるとはおもうけど。

「ねぇ、横子さん。」

「え？」

「お腹空いてない？」

確かに、今日も水しか飲んでない。

「あ～、思い出した。」

「ど、どうしたんですか？」

「倉子ちゃん、どうしよう。」

「横子さん、どうしたんですか？」

「丸山さんから、ケーキ作って冷蔵庫にいれてあるから、食べてねって言われてた。」

「あちゃー。」

「そ、それでね、食べた感想求められてたんだった。
忘れてた、倉子ちゃん、どうしたらいい？」

「丸山さんですよね。」

「くまさんの方の人が声をはさんだ。」

「知り合いなんですか？」

「ええ、まぁ。
俺、電話してきますよ。

ここにケーキ持って来てもらって、みんなで一緒に食べましょう。」

「あら、くまさん。
良い事、言うわね。」

「おおくらです。
それは、ありがとうございます。」

「みんなで試食会やね。」

何かすっかり、この人達のペースに巻き込まれてるけど、

まぁ、いいわ。

この流れに身を任せてみても、楽しそうだわ。