快適な台風の過ごし方 7Niko ページ13
緑side
浴室に逃げ込んだ俺は、雷の音が聞こえない
ように、スマホにイヤホンをつないで音楽を
流して、気をまぎらわせていた。
時計を見ると、12時を回っていた。
あれ、やすはどうした？
帰ってこない。
焦った俺はイヤホンをはずし、浴室を出た。
やすが玄関でうずくまっていた。
「あ、おーくら〜。どこにいたん…」
そう言いかけて、倒れこんでしまった。
「やす？やす？」
俺はやすを抱きかかえると、寝室のベッドに
横にして寝かせた。
「やす？大丈夫か、どないしたん？
いつ帰ってたん？」
「さっき帰ってきたん。
だけどな、おーくら呼んでもどこにも
いないし…。」
「俺、探してた？」
「そうやん、どこにもおらんくなってしまったって、めっちゃ焦った。
俺、連絡もせずに遅くなってもうて、いよいよ捨てられだと思ったら、めっちゃ悲しくなってきて。
涙があふれてきたんよ。
俺、おーくらが側にいてくれんと、あかんねん。
知ってるやろ、初めてここに暮らし始めた時
高層マンションで風でめっちゃ揺れて。
そしたらおーくら、ずっとそばにいてくれたやん。
俺、めっちゃ嬉しかってん。
あの時から、ずっと一緒にいるもんだと思っていたから。
で、おーくら、何処にいたん？」
「やす、ほんまごめん。
俺な、やすに黙ってたことがあるねん。」
「え？俺に内緒にしてたこと？」
「そうなん、いつか言わなあかんと思ってたんやけど、言い出せなくて。」
「え？」
「俺な、雷めっちゃ怖いねん。」
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作者名：niko | 作成日時：2019年8月1日 13時
