中秋の名月〜こんな夜には恋しい・・・。�� ページ47
やすside
「早く帰ってこないかな？」
俺はテレビの収録が終わり、家まで帰ってき
た。
家と言っても自分の家とちゃうで。
ここはおーくらのおうち。
どちらの家でお月見しようかと話し合ったん
だけど、俺の
「やっぱりお月様に近い方が良いよね。」
という言葉が採用になった。(笑)
そう、おーくらのお家は高層マンションの
最上階に近い。
ということはお月様に近いということで。
「先に家にいてくれてかまわないから。
俺も終わったらすぐ帰るから。」
さっきおーくらから電話がかかってきて
そう言われたんやけど。
ふぇ〜ん。(泣)
この広いお部屋で俺一人で待ってるの？
そんなぁ〜。
めっちゃ寂しいやん。
そう言っても誰もいるわけもなく、
仕方なくソファーに置いてあったタディの
ぬいを抱きしめた。
「父ちゃん、早く帰って来て欲しいね。」
「うん。」
タディが返事したような気がした。
ま、まさかね。(笑)
広い窓から外を眺めると、月が綺麗に輝いて
いた。
「あ、思い出した。」
俺は持ってきたカバンの中から、洋服を取り
出した。
「これ、これ。」
誕生日におーくらからもらったルームウェア
を取りだした。
白でモコモコして、耳が付いていて、めっち
ゃ可愛いくて、まるでうさぎさんみたいで。
ここぞ、という日に着たかったんやけど
今日がその日だったとは。(笑)
思い出して良かった。
これを着ていたら、おーくら喜んでくれるか
な。
あー、早く帰ってこないかな。
早く帰ってこないと、うさぎさんは月に帰っ
てしまいますよ。(笑)
なんてね。
そんな時にまたスマホが鳴った。
「もしもし・・・。」
「あ、やす、俺。」
「おーくら、おつかれさま。
終わったの？」
「うん、今帰る途中の車の中だよ。」
「ほんまに？」
「うん。」
「ねぇ、おーくら？」
「ん？」
「車の中からお月様見える？」
「窓開ければ見えるかな。
やすは？」
「俺はおーくらのベランダから見てるよ。」
「ちょっと待ってて。
あ、見えた、見えた。」
「じゃあ一緒のお月様みてるんやね。」
「ほんまやね。
まん丸お月様って、美味しそうだけど。」
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作者名：niko | 作成日時：2021年3月15日 19時
