８１話 ページ41
結局あのあと、授業に間に合う直前まで待っていたが、野坂はやってこなかった。
諦めて先に部屋に向かって大人しく授業を受けていたが、内容なんて頭に入らないまま時間だけが過ぎていった。
お昼から、ずっとこんな調子であまり気分が優れない。
いつの時間からだったか、気づけば野坂が授業に参加していつもの私の隣に座って授業を受けていた。
私が気づくまで待っていたようで、私と目が合うと、「行けなくてごめん。」そう小さな声で野坂が言った。
いつもなら適当に返事するのだが、今はそんな気分にとなれず授業中なのもあって知らぬふりをした。
どうでもいいと思いたいのに、ーポロポロと泣いていた彼女のことばかり考えてしまっていた。
「…Aちゃん。何かあったよね？」
「だから、何もないって言ってるでしょ。」
テンプレートになりつつあった回答を、私は繰り返して口に出した。
私の異変にかなり敏感な彼は、かれこれ7回目の「僕がいない間になにがあった？」と尋ねてきたが、私は赤裸々と語る趣味はない。
珍しく怪訝そうな顔をして野坂は私を問い詰めるが、私はのらりくらりと交わし続ける。
「…本当になんでもないよ。」
「……。」
だいたい、これは自分の問題だ。
他人の野坂にはどうもできないし、なにより自分で解決しなければ意味がない。
それに―、野坂は私とは真逆の考え方をしてる。
アレスの天秤をふざけた計画だと罵る私に対して、野坂は相変わらず大人に放棄される子どもたちを救済することができるシステムだと思ってる。
分かり合えない相手にどうこう言っても恐らく私の気持ちなんてわからないだろう。いや、わからないと断定してもいい。
それなら、話すだけ無駄だ。
「なんでもなくないよ。…僕が頼りない？相談できないこと？」
「…」
追いかける野坂を無視して先を歩く。
「…やっぱりあの時、――べきだったかな。」
「え…」
何かぼそりと後ろの方で、不穏な言葉が聞こえた。
…聞こえてしまった。
思わず振り返って、野坂を凝視する。
今こいつなんて…？
「…知っているの？」
何をとは聞かなかった。聞いたら、野坂の思う壺だろうから。
ー彼は困り顔をして、私に聞き返した。
「知ってるも何も、さっきからずっと聞いてるよね？それが答えだよ。」
「でも、そうだな」と彼はわざとらしく顎に手を当て考える素振りを見せる。
「僕は、そう…、もっと隅々まで知りたいんだ。
ーーだって、君のことが好きだからね。」
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
