４６話封蝋 ページ4
「…おかしい。」
豪奢な縁で彩られた窓の奥の澄み渡る青を見上げて遥か遠くにいる彼女に不安を募らせた。
否、不安より焦っているといった方が正しい。
ここ一年、彼女から手紙が全く返ってこなかった。
『彼女』というのは、一年前日本に行ってしまった親しい同年代の友達だ。
…同年代じゃなくても身体が弱いこともあって友達なんて彼女以外にいないのだが。
「…嫌い、になったのかな。」
思っていたことを口に出すと鼻がツンとした。
もうそれ以外に理由がないだろう。
第一、告白してきた男子に渡される手紙ほど読みにくいものはない。
おまけに手紙で『次は日本語で手紙を書く』と書いたにも関わらず、相変わらずロシア語で書いてる。
何時間も練習して何百もの紙が無駄になっても日本語を上手くかけなかったから結局カッコつけたかった自分はロシア語の手紙を日本人の少女に送ってしまったわけだ。…一年も。
思い当たることが多くて頭が痛い。
(自分の話ばっかり書いたし…
日本の常識とか詳しくないから知らないうちに変なこと書いてたかな？…
それとも毎日送ったのが裏目に出て気持ち悪がれた？
確か日本ってそういうのをあまり好まないとか、最近兄さんに聞いたしな…うぅ…)
後悔しても切りがなかった。
…手に持っていた手紙をもう一度見る。
いつもと同じように花の甘い匂いがほのかに香る紙を小綺麗な封筒に入れ、封にはちゃんと蝋を垂らしてギリカナンの家紋の判の跡をくっきり残している。
今日も送るはずだった手紙は相変わらず自分の手元にあった。
ゴクリ…ッと唾を飲み込む。
また変な汗が吹き出してきたので手紙を汚さないように机の上においた。
この手紙だけは今までのとは違う。とても重大な知らせがあるからだ。
(驚くかな…？ううん、その前に嫌がるかも…)
手紙を開けて顔をしかめる彼女の顔が容易に想像できる。
個人的に再会したときそんな愛想笑いをされたくなくて手紙を送るのを惜しんでいるわけで、…同時に今まで手紙の返事をくれないものだから余計に不安だった。
実際、彼女の実家の方には新年に挨拶の手紙を送り、その際に自分にもよろしくと書いてあったらしい。
まさか間接で言われるとは思わなくて心が折れそうになったが、丁度話を聞いてきた兄のベルナルドの方は自分に励ましの言葉もなしに顎に手を添えて深く何かを考えこんでどこかに行ってしまった。
「…会いたいな」
憂鬱なことが重なってそればかり思う。
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
