４４話そして日は昇る ページ2
『…また来たよ。』
薄暗い部屋の隅で蹲るワタシのもとに、笑顔で誰かが優しく話しかけてきた。
赤い綺麗な髪を揺らしエメラルドグリーンの瞳を細める小さな男の子。
(…ヒロトくんだ)
見間違えるはずがない、ワタシの大切な人。
ということは…これは『夢』か。
ぼんやりとそのことを理解しながら、その夢の続きをみる。
外からはがやがやと楽しそうな遊び声が聞こえる中、ワタシはヒロトくんを無視して顔をうずめてふさぎ込んだ。
『…隣、いい？』
慣れた様子でワタシに寄り添うように座るとワタシの冷えきった手に彼の温かい手が重なる。
『今日は何する？ちーちゃん』
ーーそこで『夢』は終わった。
「起きて、もう朝だ。Aちゃん」
誰かが私の体を揺さぶって起こしてくれている。
まだ眠い頭をなんとかフル回転して、のそのそと起き上がるとその少年は安堵の息をつく。
「Aちゃん、おはよう」
幸せそうに笑う彼の名は、野坂悠馬。
ここ英才こどもセンターにおいて私の一応まともに話せる男の子で現在の私と同じ小学二年生だ。
そしてその彼がなぜ私の部屋にいるのか、簡単だ。
同じ部屋で暮らしているからだ。
…まあ、意図的にそう彼が仕組んだわけで、結構腹立たしい話だけれど。一番の問題はそこじゃない。
彼は私の顔をじっと見たあと、鋭い指摘をした。
「…顔色が悪いけど嫌な夢だったの？」
ここのところ、"ヒロトくんの夢"ばかり見ていた。だから顔色が悪いかもしれない、
これじゃあこの施設に放り投げた糞叔母の家族共の夢を見る方がましだろう。
もちろん初めはヒロトくんの夢を見れて良かったが、続いていくと辛さが増すのだ。
_ここに基山ヒロトという人はいない。
望まない現実を突きつけられ、胸の奥そこからこみあげるものがあった。結構つらい。
それでも嫌な夢ではない。
悩ましい…。どう言い出そうかと考えていると野坂が切り出した。
「夢で誰に会ったの？…ちょっと僕話してくる」
いきなり何言ってるんだ。頭が追いつかなかった。
「へ？」
「…だって夢に出てくる人は、Aちゃんが一度は実際に見たことのある人なんだよ？
つまりその人はAちゃんの視界に入ったってことだ。Aちゃんの綺麗な瞳にうつった上に夢の中でいじめるだなんてすごく罪深いよね。
…今後のためにも責任は取ってもらわないと。
ふふっ、大丈夫。上手くやるよ」
野坂は私に優しく笑うが、そこにキラキラ輝く小学二年生の目はない。
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
