７５話 ページ35
「それで、サッカーの練習するんだっけ？」
「うん。…この前あまり感覚つかめなかったから、もう少し慣らそうと思って」
待て待て、感覚がつかめなかった…？この子は一体何言ってんだ。
私はすかさず突っ込んだ。
「良かったじゃん」
本当に彼は良い成績だった。
見ていてもわかる。この前の授業でやったリフティングなんて上手くできていた。
私は正直なところをいうとぐんぐん伸びていく野坂に比べると小石にも満たない存在なのに…。
嫌でも思い出す。
"ヒロトくん"に誘われて初めてボールを蹴った時、…同じ施設にいたとある少年に笑われたのをよーく覚えている。
当時は全く会話をしてなかったあいつに笑われる程下手だった。
これ以上あいつに馬鹿にされるのは悔しくて仕様がなかったから、慣れるまでつきっきりで"ヒロトくん"に教わってもらったのだ。
ボールを上手くコントロールするまでかなり時間を要したし、その上リフティングだなんて、到底無理だったに決まってる。
まあ、その後"例の事件"が起きて、私はそこまで好きではなかったサッカーを死ぬほど頑張る羽目になり、結果的に言えばかなり上手くなったと自負しているけれども…。
何度でも言いたい。
最初から呑み込み早くて上手く行った絶好調の野坂の方が何倍も上手いだろうがぁ！
なんで頭いい上に運動神経抜群で、しかもなんで呑み込みが早いの！？言われた言葉をそのままできるとかほんとなに？！
野坂のせいで私の心は荒れ狂うが、頑張ってなんとか顔に出さずに野坂の前では普通に面倒くさそうな顔をキープしていた。
しかし一方で野坂の方はというと、とてつもなく真面目な顔で私に訴えかけてくる。
「Aちゃん、僕はもっと上手くなりたいんだ。だから、僕が見る限り一番上手なAちゃんに教えてほしい」
「……。」
野坂の考えることがわからない時がある。
こんな牢獄みたいなとこで頑張っても、ここから抜け出せないし優遇もない。努力したところで過程より数字に現れるデータしか見ず、本人なんか見てもくれやしない。
正直なところ、アレスの天秤より何事にも懸命に頑張ろうとする野坂の方が異質に見えて気味が悪いと思えた。
まあ、自惚れず努力しようとするその心構えは野坂の長所とも言える…が、
「教えてやんない！」
とびっきりの笑顔で毒を吐けば、野坂が色んな表情の顔をしてなかなかの見物だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
