31 ページ31
『守』
「ん?」
河川敷にあるコートへ移動するにあたって準備をしている円堂に白石が声をかけた。円堂は自分のバックを肩に下げながら白石の方を向く。
「どうした?」
『ごめん、今日はこれで帰らせてもらうね』
「なんか用事でもあんのか?」
話を聞いた染岡にそう問われ、白石は一瞬考えると『まぁそんなこと』と言って笑った。
用事があるならしかたない、と円堂は白石の早退を許可し、白石は彼等にお礼を言ってから河川敷とは逆の方向に歩いていく。
少し歩いてから白石は携帯を取り出して、小さくため息をついた。
『なるべく早く帰って来てって……簡単に言うなぁ母さんは』
ーーー
『ただいま』
静かに玄関と扉を開けて下を見れば、自分の家族以外の靴が並んでいる。
白石は靴を脱ぐとそれを端によせ、話し声が聞こえているリビングへと足を進めた。
引き戸を開けて、目を見開く。
「あらA、おかえりなさい」
『……た、ただいま、母さん』
白石は母と仲良さそうに話す男性、の隣に居る少年に釘付けになった。
「久しぶりだなA」
「あら、2人とも知り合い？」
「えぇ。サッカーで少し」
そう言って白石の母と話すのは、＿＿鬼道財閥の養子、鬼道有人である。
白石は驚きが隠せないと言った様子で彼を見つめ、対して鬼道は口端を上げるだけの笑みを浮かべていた。
何故、彼がここに居るのか。白石家は簡単に言ってしまうとお金持ちというやつなのだが、財閥ほどの地位も金銭も正直ない。ただ父親が医者で母親が料理教室の先生というだけで、至って普通の一般家庭である。
それだけなはずなのに、この親同士の仲睦まじさはなんだろう。
『母さん、少しきど、
……有人くんと2人で話したい』
「ええ勿論。お友達なんだからゆっくりしなさいね」
『うん…』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：-naki-
x他1人 | 作成日時：2018年5月28日 20時
