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「ありがとう!」
『どういたしまして。怪我はないか?』
「うん!」
少女のお礼に頬笑む"彼"と腰を屈めて目線を合わせる白石。
"彼"は微笑んだ後、土手の上に戻ろうと歩き出した。
しかし円堂はそんな"彼"をみすみす返す訳がなく、ボール片手に近寄ってくる。
「待ってくれ!お前のキックすげぇな!!サッカーやってるのか!?」
"彼"は何も答えない。
それどころか円堂の方すら向かない。
「ねぇどこの学校なんだ?よかったら、一緒に練習しないか!?」
「…」
"彼"は円堂を一度だけ見ると、何も言わずに去って行く。
白石は"彼"が階段を登りきる姿を見送ると、突然ベンチに置いてあった荷物を抱えて後を追いかけた。
『ごめん、守。用事が出来たから今日は帰る!』
「え、ちょ、A!?」
『また明日な!』
背後から止める声が聞こえたが白石は聞こえないようで、土手を登ると数メートル先に進んでいた"彼"に声をかけた。
『……豪炎寺くん』
名前を呼ばれた彼は立ち止まり、ゆっくりと振り返って白石を視界に入れる。
「……」
『久しぶり。こっちに居るなんて知らなかったよ。もしかして連絡とかくれてた？俺携帯変えたから多分届いてな＿わっ』
豪炎寺は白石の話を遮り、男子とは思えないほど細い手首を引いて顔を寄せた。
「……何処に行ってたんだ」
『……海外』
「何をしに？何のために？」
『サッカーを、しに。強くなりたかったから』
白石は豪炎寺の瞳を見つめる。
その瞳は少しだけ憂いを含んでいて、どこか寂しそうに揺れ動いている。
「……連絡も出来なかったのか」
『……ごめん。』
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作者名：-naki-
x他1人 | 作成日時：2018年5月28日 20時
