【イナズマイレブン】怪傑の奇術師【男主】Ⅱ (ページ34)

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反射的に声をかけてしまった春奈に、声をかけられた鬼道だけではなく、春奈たちからは見えない場所で話を聞いていた土門や付き添いの白石すらも驚いた。

「雷門中の偵察にでも来たの?」

「……」

「っ、待って!」

春奈が鬼道の手首をつかんで引き留めたが、その手は鬼道によって振り払われてしまう。

「俺とお前は会っちゃいけない」

その言葉に驚く春奈。鬼道は一瞬白石に視線を向けると、それ以上何をいう訳でもなく去って行った。
白石は茫然として兄の背中を眺める春奈の頭に手をおいてから『追いかけてくるから、先に戻っててね』と今まで以上に優しく声をかけると、鬼道の後を追う。

春奈や、陰から聞いていた土門の気配が完全に消え去った場所で白石は『鬼道くん』と彼を引き留めた。

『久しぶり、元気だった?』

「……白石」

『……前に会った時よりも具合が悪そうに見えるのは、俺の気のせいかな』

「お前には、何でもわかるんだな」

そんなことない、と白石は首を横に振る。

『鬼道くんと音無さんが兄妹だったこと知らなかったよ。似てるなーとは思ってたけど、家族だなんてね』

「家族、か……俺は鬼道家に引き取られ、春奈は音無の家がある。春奈の家族は、俺では＿＿」

『いや＿＿＿君も家族だよ』

揺らぐことのない白石の瞳に、鬼道が息をのんだ。
吸い込まれてしまいそうな美しい瞳、風に揺れる翡翠の糸から目を離せない。

『音無さんの、たったひとりの兄じゃないか』

どういう経緯でふたりきりになってしまったのか今の白石には分からないが、家族というのは切っても切っても離れない契りでつながっている。
鬼道兄妹が互いを思い合っていることも、白石に隠すことはできない。

鬼道は白石からかけられた言葉をかみ砕いてから、彼の肩に額を寄せた。

「すまない……暫く、このまま…」

『……ああ』

＿＿＿＿このまま、お前に特別な感情を隠し続けるしかない俺を受け入れてくれ。

なんて。
白石本人には、口が裂けても言えない願望だった。