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第112話 ページ38

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いづみちゃんの声に促されるように玄関へと足を踏み出した私は、視界に飛び込んできた姿に目を見開く。

そこにいたのはいづみちゃんだけではなくて。

もう帰ってくるはずのない万里が、気まずそうな表情を浮かべながらいづみちゃんの隣に立っていた。




太一「万チャン!帰ってきてくれたんだ!?」

臣「おかえり、カントク、万里」




そんな温かい言葉に出迎えられながら、談話室に入った二人。

それとは対象的に、左京と十座はずっと黙ったままその姿を見つめていて。

まさか万里が帰ってくるなんて微塵も思っていなかった私は、固唾を飲んでその様子を見守る。




左京「...何しに帰って来た」




その沈黙を最初に破ったのは左京だった。




左京「二度とこの寮の敷居をまたぐなと言ったはずだが」

いづみ「万里くんも考え直して――」

左京「簡単にやめるような人間を、仲間として信用できるわけねぇだろう」




万里のことを庇ったいづみちゃんを、一刀両断する左京。

いくら相手がいづみちゃんでも、容赦ない。

万里に向ける目線は険しく、まるで本当に怒っているようにも見える。



でも、私は知ってる。

左京のこの厳しさは、優しさからくるものだって。



だからきっと、左京なりの考えがあるんじゃないか。

そう思ってしまう。




厳しい言葉を浴びせられた万里は、さっきからずっと黙ったままだけど。

視線は下がらず、左京の方を向いたまま。




―――なんか、違う。




真っ直ぐと視線を合わせる万里が、いつもとは違っていて。

そんな違和感は、次に万里に発せられた言葉によって明らかになった。





万里「お前らの一人芝居を見た」




"正直、負けたと思った。"

そう続けられた言葉に、思わず息を呑む。




あの万里が、素直に負けを認めるなんて。

そんな私の気持ちを知っているのかいないのか、視線を左京からこっちの方へずらしたかと思えば。




万里「もう一度、今度は本気でやって、お前らに勝ちたい。だから戻らせてくれ」





真剣な眼差しのまま、頭を下げた。





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琥珀(プロフ) - えななんさん» 更新ができずお待たせしてしまってすみません...。こうして今でもコメントいただけると、とっても嬉しいです!寒くなってきましたので、お身体にはお気を付けくださいね。 (2022年10月6日 11時) (レス) id: 3c7d372253 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - だいぶお話も進んで、冬組に近づいてきていて嬉しいです!これからも楽しみにしてます! (2022年10月3日 17時) (レス) @page41 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - るるるーさん» ありがとうございます!これからも喜んでいただけるように更新を続けていこうと思っているので楽しみにお待ちいただけると幸いです! (2022年8月8日 0時) (レス) id: 74473316dd (このIDを非表示/違反報告)
るるるー(プロフ) - この前作品を読み始めたばかりなのですが、あっという間に読んでしまいました!!ワードセンスや設定などとても好みです!無理しない程度に、更新頑張ってください。応援しています! (2022年7月29日 18時) (レス) id: 4d458783a4 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 瑠李さん» 本当ですか!?お読みいただきありがとうございます!更新頻度にばらつきがありますが、是非楽しみにしていただけると嬉しいです^^ (2022年7月14日 10時) (レス) id: 8c7c498829 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:琥珀 | 作成日時:2022年4月11日 23時

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