第１０７話 ページ33
〜万里side〜
"待って"。
寮を出て、ただ目的もなく足を動かしていれば、後ろから俺を呼び止める声が聞こえてきて。
振り返った先にいたのは、急いできたのか息を切らしながら呼吸を整えてる監督ちゃん。
―――あいつが追っかけてくるはずがねぇのに。
どこか淡い期待を抱いていた俺。
そんな自分を心の中で笑いながら、なんだとでも言いたげな視線を返す。
いづみ「やめるって本気なの？」
「あー、うん。秋組もMANKAIカンパニーも辞めっから」
いづみ「ちょっと、待って。せめて理由を教えて」
...理由、か。
別にこれといった理由なんかねぇ。
――――"おめぇ...十座に負けるぞ"。
雄三のおっさんにそう言われて、Aと喧嘩して。
むしゃくしゃしたし、兵頭に勝つために芝居するのが馬鹿らしくも思えた。
...けど、んな事言ったって監督ちゃんが解放してくれるとも限んねぇしな。
「元々兵頭に勝つために始めたから、芝居で余裕で勝ってるってわかれば、やる意味もねぇっていうか」
だからそれとなく、俺が言いそうな理由を出したんだけど。
いづみ「十座くんに勝ったって思ってるなら、直接見て、ちゃんと確かめてみなよ」
監督ちゃんは俺に向かってんなことを言ってきやがった。
見たって、何が変わんだよ。
どうせ、兵頭のあの大根演技が晒されるだけだろ。
そう口を開くよりも先に、監督ちゃんが言葉を続けて。
いづみ「このままいなくなったら、まるで結果が知りたくなくて逃げてるみたいだよ」
「―――」
ドクン。
心臓が嫌な音を立てる。
"俺が逃げるわけねぇだろ"。
すぐにそう言い返すことができなかったのは、図星だったからじゃねぇ。
逃げるってことは、俺が兵頭に負けるって思ってるってことだろ。
となると、俺がすることは結果的に一つに絞られるわけで。
「...わあったよ。確かめりゃいいんだろ」
観念したように息を吐いた俺を見て、監督ちゃんはどこか満足そうな表情を浮かべた。
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琥珀(プロフ) - えななんさん» 更新ができずお待たせしてしまってすみません...。こうして今でもコメントいただけると、とっても嬉しいです！寒くなってきましたので、お身体にはお気を付けくださいね。 (2022年10月6日 11時) (
レス) id: 3c7d372253 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - だいぶお話も進んで、冬組に近づいてきていて嬉しいです！これからも楽しみにしてます！ (2022年10月3日 17時) (レス) @page41 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - るるるーさん» ありがとうございます！これからも喜んでいただけるように更新を続けていこうと思っているので楽しみにお待ちいただけると幸いです！ (2022年8月8日 0時) (レス) id: 74473316dd (このIDを非表示/違反報告)
るるるー(プロフ) - この前作品を読み始めたばかりなのですが、あっという間に読んでしまいました！！ワードセンスや設定などとても好みです！無理しない程度に、更新頑張ってください。応援しています！ (2022年7月29日 18時) (レス) id: 4d458783a4 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 瑠李さん» 本当ですか！？お読みいただきありがとうございます！更新頻度にばらつきがありますが、是非楽しみにしていただけると嬉しいです＾＾ (2022年7月14日 10時) (レス) id: 8c7c498829 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀
| 作成日時：2022年4月11日 23時
