第１０４話 ページ30
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「あれ、Aだ」
『やっほ』
幸いなことに、駆け付けた警官は私の知り合いで。
ポカンとしながら私と警官の人を交互に見やる万里を無視して、私はにこやかな笑みを浮かべた。
『ごめん、私が絡まれちゃって...ちょっと一悶着あった』
「まったく。男関係には気をつけろよ？」
『はーい！ってことで見逃してくんない？』
お願い、と両手を合わせてじっと見つめれば、分かりやすくうーんと渋るこの人。
ちらっと何かを含んだ視線を向けるもんだから、思わずぷっと吹き出してしまう。
そんなあからまさにするぐらいだったら、素直に言えばいいのに。
『鍵渡してくれたら、大人しくお家で待っとく』
「まじ？なら仕事終わったらすぐ帰るよ」
『はは、がっつきすぎ』
ちゅっとこめかみにキスを落とし私に鍵を渡したお兄さんは、そのまま仕事に戻っていって。
その場に取り残された私は、受け取った鍵を指でくるくると回しながら、万里の方に視線を送る。
『貸し１ね』
万里「は？」
眉間に皺を寄せた万里だったけど、私に助けられた手前何も言えず。
今度は私が得意げな顔をしながら、そのまま背を向けて歩き出した。
* * *
それからしばらくは万里との接点はなくて。
私も好きに生きてたし、万里も学校をさぼって好きにやってたんだと思う。
次に万里にあったのはいつだっけ...ああ、あの時か。
確かあれは、私が他校の生徒に呼び出されてる時だ。
「好きです！付き合ってください！」
『――っ、』
なんかAに話があるみたい。
知り合いに呼ばれていざその場所へ行けば、このざまだ。
名前も思い出せなければ、顔だってピンときてない。
誰だ、この子。
私この子といつシたっけ。
頭の中では呑気にそんなことを考えているのに、身体だけは言うことを聞かず。
視界がぐらつき、この世の終わりなんじゃないかと思うほど気持ち悪い感覚が私を襲った。
脳裏に過るのは、母さんの顔。
熱を帯びたその目は、徐々に虚ろになっていって。
父さんは、あの女はっ――。
『っぁ、』
「大丈夫！？」
膝から崩れ落ちた私に、気持ち悪い手が伸びてくる。
触らないでほしいのに。
今すぐ振り払いたいのに。
私はそれすらもできないぐらい、憔悴しきっていた。
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琥珀(プロフ) - えななんさん» 更新ができずお待たせしてしまってすみません...。こうして今でもコメントいただけると、とっても嬉しいです！寒くなってきましたので、お身体にはお気を付けくださいね。 (2022年10月6日 11時) (
レス) id: 3c7d372253 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - だいぶお話も進んで、冬組に近づいてきていて嬉しいです！これからも楽しみにしてます！ (2022年10月3日 17時) (レス) @page41 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - るるるーさん» ありがとうございます！これからも喜んでいただけるように更新を続けていこうと思っているので楽しみにお待ちいただけると幸いです！ (2022年8月8日 0時) (レス) id: 74473316dd (このIDを非表示/違反報告)
るるるー(プロフ) - この前作品を読み始めたばかりなのですが、あっという間に読んでしまいました！！ワードセンスや設定などとても好みです！無理しない程度に、更新頑張ってください。応援しています！ (2022年7月29日 18時) (レス) id: 4d458783a4 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 瑠李さん» 本当ですか！？お読みいただきありがとうございます！更新頻度にばらつきがありますが、是非楽しみにしていただけると嬉しいです＾＾ (2022年7月14日 10時) (レス) id: 8c7c498829 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀
| 作成日時：2022年4月11日 23時
