第１３５話 ページ38
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雄三「おう嬢ちゃん、元気してたか？」
『...たった今元気じゃなくなりましたね』
雄三「はは、んなこと言うなって」
夜の稽古時に突然姿を現した雄三さん。
わしゃわしゃと乱雑に頭を撫でてくるこの人に、私はきっと睨みを入れる。
...来るって知ってたら、意地でも出掛けたのに。
そんな私の心情を察してるからこそ、雄三さんは劇団に一切連絡を入れないでここに来たんだろう。
ほんと、嫌な人だ。
雄三「へえ、人数も減ってねえな。で、あれからどうなった？」
いづみ「観てもらえば、分かると思います」
雄三「自信あるみてぇじゃねえか。面白い、やってみな」
どうやらもう一度雄三さんに通しを見てもらうみたいで。
堂々としているいづみちゃんを見て口角の上がった雄三さんはそう言葉を放つ。
咲也「よ、よろしくお願いします！」
どこか少し緊張した様子の咲也の声を合図に、通しの稽古が始まった。
* * *
いづみ「どうでしょうか」
雄三「...」
通しが終わり、訪れた沈黙。
一通り見終えた雄三さんは相変わらず怖い顔で無言を通していて。
何も言わないからこそ襲ってくる緊張感に、思わず手に汗を握ってしまう。
『なにこの沈黙』
シトロン「キンチョーするネ」
至「一思いに言ってほしいね」
皆の視線が雄三さんに集まる中、ふっと息を漏らした雄三さん。
そしてそのままこっちの方に顔を向けたかと思えば、
雄三「...悪くねえな」
そんな言葉を漏らした。
ん？聞き間違いかな。
今"悪くない"って聞こえたような気がしたんだけど。
皆も同じことを思っているのか、ポカンとした顔が雄三さんに向けられていて。
そんな私たちの気も知らずに、険しかった顔は徐々に笑顔へと変わっていく。
雄三「短期間でよくここまで伸ばしたじゃねえか」
咲也「やったああ！」
真澄「当たり前だし」
シトロン「見事ぎょふんと言わせたネ！」
『"ぎゃふん"、ね。でも良かったじゃん、おめでとう』
あれだけの言われようだったからこそ、素直に私も嬉くなって。
顔を綻ばせて喜んでいる春組を見て、私も思わず口角が緩んでいく。
雄三「...そんな顔もできんじゃねえか」
『っ、』
しまった。
そう思うよりも先に返ってくる笑顔。
それに逃げるかのように、私はふいっと視線を逸らした。
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琥珀(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます！まだまだ春組ですが、気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年5月4日 23時) (
レス) id: 2e5c416c18 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 100話目おめでとうございます！いつも更新を楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2021年5月4日 20時) (レス) id: bf03d702ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀
| 作成日時：2021年5月4日 14時
