第130話 ページ33
〜至side〜
「まさかのシトロンか...!」
こっちに向かって走ってきた化け物みたいなシトロンに開いた口が塞がらない。
いや、配役おかしすぎでしょ。
そう思いながらも俺はこの後の展開が少し気になってしまって。
俺が黙っている間も演技はどんどん進んでいく。
咲也「『ほら、お母さん、何か言って!』」
綴「『考え直せよ、親父。親父の酒癖の悪いところも、ギャンブル癖も、みんなわかってるしさ』」
「ひどいな、俺の設定」
俺、酒も煙草もギャンブルだってしないんだけど。
まあガチャをギャンブルとするかは置いといて。
でも何だかこの空気に絆されてしまっている自分もいるんだよね。
真澄「『お願いだから、出ていくなんて言わないでよ...』」
それにしても真澄は演技上手すぎ。
あの真澄が俺に悲しそうな目を向けてくると、違和感で正直戸惑う。
この状況をどうしたものか。
そんな事を考えていると、不意に奥から人影が。
次こそ監督だろうと思っていた俺はその予想を裏切られることになる。
何やってるんだよ、馬鹿。
こういうの嫌いなくせに。
『パパっ』
至「っ、」
俺を見て一直線に駆け寄ってきたのはAで。
そのまま俺のスーツを掴めば、胸におでこをぐりぐりと押し当ててくる。
『パパ、わたし"いい子"になるから。だから、出て行かないでよ...』
Aの口から縋るように出されるのはそんな弱々しい言葉。
涙を堪えているのか、肩は小刻みに震えていて。
まるで到底演技だとは思えないその素振りに、らしくもなく焦りを感じてしまう。
まさかほんとに泣いてたりして。
そんな不安が頭をよぎり、頬に手を添えて顔を上げさせる。
けれど目に入ってきたのは、
「何笑ってんの、A」
『ふっ、ごめ、シトロンの女装があまりにも、キツくてっ』
必死に笑いを堪えようとしているAの姿だった。
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琥珀(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます!まだまだ春組ですが、気長に待っていただけると嬉しいです! (2021年5月4日 23時) (レス) id: 2e5c416c18 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 100話目おめでとうございます!いつも更新を楽しみにしてます。これからも応援してます! (2021年5月4日 20時) (レス) id: bf03d702ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀 | 作成日時:2021年5月4日 14時