第１２４話 ページ27
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シトロン「実はワタシ、日本には留学しに来たわけじゃないヨ」
落ち着いた声で淡々と話しているからかな。
普段よりもずっと流暢な日本語に、どんな反応を返せばいいのか分からなくて。
そしてシトロンは、ゆっくりと私を窺いながらぽつりぽつり言葉を続ける。
自分がいた国から逃げるためにここに来たこと。
今も追手がシトロンを連れ戻そうとしていること。
そして、
そのせいで劇団に迷惑をかけてしまうかもしれないこと。
時折苦しそうな表情で話すシトロンを見て、これは冗談とかそんなんじゃない気がして。
シトロン「カントクはここに居ていい、言ってくれたネ」
『そっか、』
この劇団の主宰であるいづみちゃんがそう言ってくれた。
なら別にシトロンは気にすることはないはずなのに。
まだ迷いがあるのかその瞳は不安気でゆらゆらと揺れている。
国から追われる。
それがどんなことかは私には想像もつかない。
もちろん、シトロンがどんな境遇で生きてきて、どんな生活を送っていたのかも。
でも帰りたくない場所に帰ることがどんなに苦痛か、
それぐらいなら私でも理解はできる。
いや、違うな。
私だから"こそ"、理解できる。
『シトロンは国に帰りたくないんでしょ？』
シトロン「...帰りたくないネ」
『ならここに居なよ』
シトロン「っ」
『自分の気持ちがもう出てるんだから、何も迷うことはないよ』
そう言いながら、私は心の中で苦笑いを浮かべる。
我ながらすごい無責任なこと言ってるよなあ。
ここに居ればいい、だなんて。
―――私はもうすぐでいなくなるっていうのに。
でも何となく自分とシトロンを重ねてしまって。
だから私にはシトロンを国に帰すようなことはできない。
『逃げ切れる保証はないけどさ、シトロンが自由に演劇ができる手伝いぐらいはしてあげる』
私には必要のないお金だってあるわけだし。
最悪人脈使えばシトロンを隠すぐらいのことはできそう。
シトロン「...不思議ネ」
だからシトロンは自分のしたいように生きなよ。
そう続けた私にシトロンはそんな言葉を落とした。
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琥珀(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます！まだまだ春組ですが、気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年5月4日 23時) (
レス) id: 2e5c416c18 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 100話目おめでとうございます！いつも更新を楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2021年5月4日 20時) (レス) id: bf03d702ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀
| 作成日時：2021年5月4日 14時
