第１１７話 ページ20
〜至side〜
どれくらい経ったかな。
周りからはすやすやと寝息が聞こえてきて。
俺は皆を起こさないように静かにスマホの明かりをつける。
人と関わることが苦手なくせに。
さっきから稽古のことだったり...Aのことが頭にちらついて離れてくれない。
一日の中でAは俺といる時間の方が長かったんだけどなあ。
Aのあんな顔、初めてみた。
"私、人から好意向けられるの大っ嫌いだからさ"。
確かにそんなこと言ってたけどさ。
でもまさかあそこまでだったなんて、誰が思うよ。
でも実際、俺も咲也と同じく行ってほしくないな、って思っちゃったんだよね。
普段よりもお洒落して、可愛くなっちゃって。
引き止めたくなるに決まってる。
...俺らしくないけど。
そんなことを思いながら、無意識とは怖いもので。
『"もしもーし、どしたの至"』
いつの間にか、手に持つスマホからはそんな声が聞こえてきて。
そこでようやく俺は、自分のしていることに気が付いた。
俺、何で電話なんかかけて、
急いで通話を切ろうとした手を止めて、俺は慌てて舞台袖まで歩いていく。
焦る気持ちを悟られまいと気持ちを落ち着かせれば、スマホを耳に当てる。
「今大丈夫？」
『"うん、だいじょうぶだよ？"』
「...ゲーム中でしょ」
『"あ、やっぱ音で分かる？"』
そんなの、俺の部屋でやればよくない？
そんな嫉妬なんてもちろんAの前で出せるはずもなく。
至さんにはお見通し、と言えばクスクスと耳に心地よい笑い声が届いた。
『"んで、何かあったの？"』
いつも俺を甘やかしてくれる優しい声。
そのせいか、ぐらぐらと俺の中での意思が揺れ動く。
Aには言うつもりなかったんだけどなあ。
こんな、俺の心を吐き出すみたいな悩み。
それでも本音は止まることを知らない。
「劇団やめようと思ってるんだよね」
こんなこと言われても困らせるだけだって、分かってるのに。
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琥珀(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます！まだまだ春組ですが、気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年5月4日 23時) (
レス) id: 2e5c416c18 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 100話目おめでとうございます！いつも更新を楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2021年5月4日 20時) (レス) id: bf03d702ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀
| 作成日時：2021年5月4日 14時
