第111話 ページ14
〜雄三side〜
"私がいなくなるのなんてすぐですよ"。
確信を持っているのか、嬢ちゃんはきっぱりとそう断言した。
それは恐らく、嬢ちゃんが人との付き合いをはっきりしてきたことからくるものだろう。
けど、どーだかな。
俺には春組の奴らがそんなすぐに嬢ちゃんを手放すとは到底思えねえ。
俺が嬢ちゃんと会話をしているだけで飛んできたいくつもの視線。
それが何よりの証拠だ。
特にあの主役のロミオ。
あいつ、演技中以外は頻繁に嬢ちゃんを気にしてやがる。
それは幸夫さんの娘に夢中なあのガキとは違う。
どちらかというと、嬢ちゃんの繊細な変化も見逃さないようにしているように見えた。
...きっと、嬢ちゃんの本質を理解してるんだろう。
無意識かどうかしらねーが、唯一嬢ちゃんの警戒が緩い相手だ。
まあきっとあの嬢ちゃんのことだからな。
いざとなれば平気でそいつまでも切り捨てる"覚悟"はありそうだ。
何が嬢ちゃんをそうさせたのか。
残念なことに俺はそれを知る術はない。
それに、あれだけ警戒されちゃあ次会った時に話してもらえるかさえ疑わしい。
この劇団が、嬢ちゃんにとっての"救いの場"になればいいんだが。
「...今の春組じゃあ到底それも叶わねえか」
そんな俺の呟きは、誰にも拾われることなく落ちていった。
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琥珀(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます!まだまだ春組ですが、気長に待っていただけると嬉しいです! (2021年5月4日 23時) (レス) id: 2e5c416c18 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 100話目おめでとうございます!いつも更新を楽しみにしてます。これからも応援してます! (2021年5月4日 20時) (レス) id: bf03d702ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀 | 作成日時:2021年5月4日 14時